日本ハム栗山英樹監督(58)が攻めの采配で決勝点をもぎ取った。ソフトバンク13回戦(ヤフオクドーム)の9回先頭で四球出塁した4番中田に代走を送るなど、執念のタクト。相手守護神の新人甲斐野を揺さぶり続け、無安打で勝負を決める1点を奪った。逆転優勝へ向けて、1つも落とせない勝負どころと位置づけた後半戦最初のカードは、青写真通りの3連勝が見えてきた。

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同点で迎えた9回の攻撃。栗山監督の最初の采配が、9回で勝負を決める-、というメッセージだった。先頭の4番中田が四球で出塁すると代走中島を送った。「目いっぱいやって、勝つか負けるか。ここで目いっぱい行かなくて、どこで行くのか」。延長戦が視野に入る展開でも、主砲を下げることに迷いはなかった。「先のことを考えて戦っている場合じゃない」。腹をくくって勝負に出た。

攻めのタクトは、吉と出た。俊足の中島が新人甲斐野にプレッシャーを与え、バントの構えをした5番渡辺に死球。犠打、申告敬遠で1死満塁の絶好機をつくり、最後の一手は2死満塁から石川亮に代打宇佐見。ベンチに残る最後の捕手を切り札として送り込み、押し出し四球。無安打で決勝点を奪い取った。

延長戦に突入していれば、厳しい戦いが想定された。ソフトバンクは5投手が残っており、控え野手も全員残っていた。日本ハムは中田がいない打線に加え、ブルペンは残り3人。控え捕手もおらず、形勢は不利となる。それでも勇気を持って攻めの姿勢を貫き、選手も呼応。勝ちのある、大きな1勝をもぎ取った。

栗山監督 普通に考えたら、こっちは(ブルペンを)使い切っているわけだから、早めに勝負に行くしかない。向こうはピッチャーが残っていて余裕がある。何度も言うけど、厳しいからこそ攻め続けないといけないし、選手を信じていくしかない。まあ、オレは何もしていないよ。

逆転Vへ7差の崖っぷちで迎えた、首位との3連戦は1つも落とせない。前半戦終了時に、栗山監督は後半戦最初のカードの重要性を選手に説いていた。「この3連戦をどう戦うのか。選手にも、そういう(負けられない3連戦という)捉え方をしてもらわないと、ペナントを戦っている意味がない」。前夜は初回にエンドランを仕掛けて先取点を奪って先勝。この夜も打てる手を尽くして連勝した。まずは5差に縮めた。「明日だな。問題は、明日。有原が行くわけだから」。先発陣の柱、有原をあえてソフトバンクにぶつける。何が何でも、3連勝を決める。【木下大輔】