阪神が元ファンクラブ会員の中日2年目山本拓実投手(19)に、プロ初勝利を献上してしまった。頼みの新外国人ヤンハービス・ソラーテ内野手(32)が不発で、先発の青柳晃洋投手(25)も痛恨のバント併殺打など拙攻で攻略に失敗。兵庫・宝塚市出身で藤川球児に憧れ、少年時代は1カ月に2回ほど甲子園に応援に来ていた市西宮高出身の167センチ右腕にしてやられ、暑く苦い夜になった。

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阪神打線がかつての「阪神ファン」にひねられてしまった。2年前まで甲子園から車で約20分の市西宮でプレーしていた山本に凡打の山を重ねた。高卒2年目でプロ2度目の先発は6回まで投げさせてしまった。4安打でわずか1点。矢野監督もまさかの拙攻を「投げっぷりがいいというか。度胸がいい。そういう感じに見えました。ちょっとウチが打てなかった」と渋い表情で振り返るしかない。

そつなく攻めないと、勝機も訪れない。1点を追う5回は1死後に連打で一、二塁。青柳に犠打を命じたが捕手前に転がり、三塁転送からの併殺打に倒れてしまった。指揮官は打席でリズムを作れなかった青柳に「バント失敗とか含めて。流れが変わるし、チームも勝てないし自分も勝てない。結果、あの後に点取られている。勝ちにくい方向にいっちゃうよね、どうしても」と苦言を呈した。

前夜、劇的なサヨナラ本塁打を放った新外国人ソラーテも不発だった。6回無死一塁で二塁併殺打。この日は4打数無安打だった。右打席では打率5割6分6厘だが、左打席はなぜか当たりが出ずに13打数1安打の7分7厘にとどまる。指揮官は「ソラーテのホームランとかで点を取りたいですけど、ウチはつないでつないでが持ち味」と言う。まだ19歳で、167センチと小柄な山本を打てそうで打てなかった。カーブやスライダー、チェンジアップなどを織り交ぜられ戸惑った。

地元出身で小学校の頃は月に2度観戦に通い、阪神ファンクラブに入会していた山本の引き立て役を演じてしまい、プロ初勝利を献上してしまった。今季は巨人高橋、DeNA大貫、中日清水にも初星を許しており、再び屈辱を味わった。7月は9勝12敗1分けと負け越し、一進一退の戦いが続く。今日8月1日の3戦目を最後に長期ロードに出る。スカッと勝って、ツキを変えたい。【酒井俊作】

▽阪神清水ヘッドコーチ(中日山本に初勝利を献上)「打席での必死さを見ていると、打ちたいとかの気持ちが前面に出ていて見習わなきゃなと。(初物に弱いのは)今後の課題だと思う」

▽阪神浜中打撃コーチ(中日山本について)「まっすぐが速かった印象です」

▽阪神梅野(7回に犠飛も9回の好機に三振)「(打撃の)状態は悪くない。(9回は)決めたかった。悔しいけど、また明日」

▼阪神は今季、4人の投手に初勝利をプレゼント。相手の4人合わせての防御率は2・05(22イニングで5自責点)と、若手に好投を許している。走者を置いた状況でのチーム打率は1割4分7厘(34打数5安打)、得点圏打率は1割4分3厘(14打数2安打)と、要所を締められている。