“燕のゴジラ”が、また新たな歴史をつくった。ヤクルト村上宗隆内野手(19)が2回無死一塁から22号2ランを放ち、今季の72打点となった。セ・リーグの高卒2年目では、60年に71打点を記録した王貞治(巨人)の記録を超えた。試合には敗れたが、7月は1本のみだった本塁打が8月に入って、すでに2本。若き主砲が、本来の調子を取り戻しつつある。

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チームの「Happiness」のため、村上はバットを振る。1点リードで迎えた2回無死一塁、新しい登場曲に選んだ嵐「Happiness」に乗せて打席へ向かった。「走りだせ 走りだせ 明日を迎えに行こう」。カウント1-1から中日先発山井の外角高めの直球に逆らわずにバットを出し、逆方向の左翼席まで運んだ。2試合ぶりの22号2ランで追加点。歌詞の通り、ダイヤモンドをゆっくりと走った。「逆方向に打てているのは、いいこと。継続して打ちたい」と振り返った。

登場曲は、知り合いから「これにしたら打てるよ」とアドバイスを受け、初めて変えた。7月は本塁打が1本と苦しんでおり、気分転換のためにも「変えようかな」と思っていたところだった。「それ(登場曲)で打てたんじゃないから」と笑ったが、吉兆の曲となった。

生まれたのは、王氏がダイエーの監督を務め、初の日本一に輝いた翌年の00年。現役時代は知る由もなく直接会ったこともないが、輝かしい経験と実績は、テレビで見ている。「日本記録のイメージ」と話す偉人の打点を抜いた。「特に意識はない。前の打者がつないで、回してくれている。その期待に応えないといけないと思っている」。打率は2割2分8厘だが、得点圏では2割5分7厘と数字はわずかに上がる。この日も走者を置いての場面での本塁打。得点圏ではなかったが「チャンスでは打ちたい」という気持ちが強くなる。

暑い夏を乗り切るため、ルーティンとなっている早出練習は、約半分で切り上げるなど練習量は調整するが、試合後の素振りでは最後まで体を動かした。「初めての1軍での夏なので、まだよく分からない。無理やり食べなくても、食べられます」と強気だ。試合には敗れたが、次こそチームの勝利への一打を放つ。【保坂恭子】