西武の誇る山賊打線が12安打12得点でロッテ投手陣を粉砕し、2年連続23度目のパ・リーグ制覇を果たした。

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社会人で開花した遅咲き右腕の西武平井克典投手が、歓喜の涙を流した。8回1死から、今季81度目の登板。優勝の瞬間、感無量の表情で目を潤ませた。「しんどかった。無我夢中で走ってきて、最後の方は打たれて、優勝できなかったらどうしようと重圧もあった。いろんなものから解放されました」。

高校、大学時代は大舞台と無縁だった。社会人1年目のサイドスロー転向が飛躍の転機で「心機一転、再スタートのきっかけがつかめた」。愛知産大4年の5月下旬。進路未定の中、都市対抗予選が行われていた愛知・岡崎市民球場へ足を運んだ。試合に敗れたホンダ鈴鹿の甲元訓(さとる)監督(48=現統括GM)に「ここでやりたいです!」と入部を直談判。この熱意が採用の決め手となったが、現実は厳しかった。1年目の9月に同監督から「このままじゃ社会人で通用しない。ましてプロなんて」と言われサイド転向を決心。変則右腕が手薄だったこともあって登板機会が次第に増え、実戦を重ねることで制球力も安定した。さらに大学時代から「キャッチャーが捕れないほどキレていた」(甲元氏)というスライダーの威力もアップ。3年目にはエースに成長し、プロの扉が開いた。そしてプロ3年目。「神様、仏様、平井様」と呼ばれるまでになった。

甲元氏は、成長した教え子の姿に「気が強くて投手の素養があり、人懐っこくて謙虚で律義」とべた褒め。平井は「甲元さん、話を盛り過ぎますからね」と苦笑しながらも、感謝を忘れない。リーグ連覇を支えた27歳。次は、昨年果たせなかった日本一の吉報を恩師に届ける。【鈴木正章】