下克上へ、当たって砕けろ! ミラクル進撃を続ける矢野阪神が9日からクライマックスシリーズ(CS)ファイナルの巨人戦(東京ドーム)に臨む。

7日DeNA戦(横浜)で左足に死球を受けて負傷した福留孝介外野手(42)が、強行出場する可能性が浮上。ファーストステージを勝ち上がり、リーグ王者巨人に4連勝した14年ファイナルの再現を狙う。

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明日なき戦いを続ける矢野阪神に失うものはない。シーズン終盤の土壇場から6連勝、ファーストステージではDeNAに1勝1敗と逆王手をかけられながらも3戦目の雨中決戦を制してファイナル進出。矢野監督は「ここまでたどり着けたというのは選手のすごさ。当たって砕けろという気持ちで行く」と力を込める。一戦必勝。先を見据えた戦いなどあり得ない。

G倒、そして下克上へ。頼れる男の代わりはいない。ベテラン福留が巨人戦に強行出場する可能性が出てきた。7日のファーストステージDeNA戦(横浜)の初回に左足に死球を受けて負傷。足を引きずりながら帰りのバスに乗り込んだベテランが、歯を食いしばってグラウンドに立つ。最終判断は当日の状態を見てになるが、福留は「何とかなればいいけどね」と話すにとどめる。清水ヘッドコーチは「他に代わる選手いる? 頑張ってもらおう。孝介に」とすがる思いだ。

大舞台になるほど力を発揮する。それが福留のすごさだ。CSでは球団最多5本塁打をマーク。6日DeNA戦でも劣勢の9回に意地のアーチを右翼席中段に突き刺し、意気消沈の虎ナインを奮い立たせた。一発勝負の短期決戦。レギュラーシーズンとは違うポストシーズンだからこそ経験豊富なベテランの力が必要だ。

5年前の再現を狙う。状況は14年のクライマックスシリーズに似ている。当時はリーグ2位でファーストステージに臨み、3位広島を撃破。ファイナルではリーグ優勝した巨人に4連勝して日本シリーズに進出した。福留は広島戦では前田健(現ドジャース)から本塁打をマーク。快進撃の大きな原動力となった。

「まだまだこれから。どんどん成長するいい機会を次のステージでもらえた。楽しんでやればいい」。手負いの福留は、自身の事よりも若手を中心としたチーム全体のレベルアップに目を向ける。ファイナル1戦目の巨人先発は投手部門3冠の山口が相手。福留は難敵から今季9打数4安打、打率4割4分4厘と好相性。しかも舞台は今季打率4割4分2厘、3本塁打と大得意の東京ドームだ。令和初の下克上には、福留の力が必要不可欠だ。【桝井聡】