秋山に一片の悔いなし。侍ジャパンを離脱した西武秋山翔吾外野手(31)が2日、代表への思いを激白した。プレミア12開幕直前に死球を受け、右足第4趾(薬指)基節骨骨折。この日、都内の病院で再検査を受けた。海外フリーエージェント(FA)権行使によるメジャー挑戦を表明している中での不運のけがにも後悔は皆無。リスク承知の出場を決断した裏には、侍への強い思いがあった。また、チームはこの日、沖縄から1次ラウンドが開催される台湾へ移動した。

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帰京から一夜明け、秋山の胸に後悔の念はみじんもなかった。侍ジャパンを右足薬指骨折による負傷離脱。海外FA権を行使してのメジャー挑戦を表明した直後に、アクシデントに見舞われた。1日にチームを離れ沖縄・那覇から帰京。南国とは打って変わって枯れ葉舞う都内の病院で再検査を受けた。患部の右足に気を使いながら歩く秋山の口からは、侍ジャパンへの強い思いがほとばしった。

秋山 賛否両論あると思う。この時期に、リスクがあることは誰もが分かっていることですから。でもFAがあったにしても、僕としては侍に呼んでくれる以上、準備をした。全力で取り組んだ。けがはその結果。行ったことに後悔なんてまったくない。

143試合を戦い抜いた直後の秋は、メジャー挑戦を控える特別な秋でもあった。だが、翌年に新シーズンが待っているのは、現役選手すべてに当てはまること。プレミア12に出場することでの「けが」のリスクをデメリットと認識しつつも、代表辞退の選択肢はなかった。

秋山 デメリットなんて百も承知。メリットに目を向けるべき。侍ジャパンというのはそういう場所。そこでやることに意義を感じてプレーする。ファンの方もそういう姿を見て応援してくれる。それなのに侍が戦っている中、FAのことがあるからといって断って秋季練習をしている自分をイメージできなかった。「何やっているんだ」って自分のことを信じ切れなかったのかと、それこそ後悔していたと思う。

10月31日、今合宿始まってから初の強化試合カナダ戦第1戦。内角低めを狙ったカーブが無情にも右足爪先めがけて飛んできた。初見の投手が続く国際大会。積極的に打ちにいこうとした結果だった。

秋山 デッドボールというのは、いつだってアンラッキーなんですよ。だからって怖がって1打席あげるような野球観は許せない。けがをするかもしれないなんて承知の上。もしこれでメジャーへいけなかったら笑いものになるかもしれない。だからといって侍ジャパンというものを人ごとのように見ることはできない。こういう前例をつくったことが、日本のためになったのかは分かりません。でも選んでもらった以上、全力で取り組んだまで。

トップ選手が集い、日の丸を背負って世界一を目指し戦う。宮崎での直前合宿からわずか12日間だったが、秋山にとっては貴重な日々だった。

秋山 この期間はめちゃくちゃ有意義でした。技術だって高い選手がそろっている。練習メニューにしたって、飽きがこないような工夫をしてもらったり、足りないことがないような配慮をしていただいた。チーム全体の雰囲気に「あの人がやらないから、自分もいいや」っていうような空気がない。危機感を持ちながら、お互いを高め合うような雰囲気がある。食事会場でもメンバーが固まらないで会話する場面が多かった。そんなチームで一緒に戦えないことは、ものすごく残念ですけどね…。

練習では、初侍の周東からアドバイスを求められると、身ぶり手ぶりで伝えた。チームを去る直前、その周東に使わなかった“切り込み刀”のバット2本を置き土産。稲葉監督からは世界一を果たしたシャンパンファイト参加を促された。

秋山 メジャー挑戦にどれだけ影響があるかなんて分からない。ただ、救いなのは骨折の程度は思ったよりも低かった。痛みもだいぶひいた。徐々に動かせるようになっていくと思う。今の僕にできることは、全力で治すことと、日本を全力で応援することだけ。

世界一の勝利の美酒。東京でのシャンパンファイトには、ゴーグル持参で飛び込む。【栗田成芳】