阪神ドラフト1位の創志学園・西純矢投手(18)が9日、プロ意識を高める濃密な時間に浸った。

同2位の履正社・井上広大外野手(18)と秋季安芸キャンプを初見学。ブルペンで藤浪晋太郎投手(25)らの投球を近くから見守って強烈な刺激を受け、通算219勝の山本昌臨時投手コーチ(54)からも激励された。貴重な時間をプロで生き抜く財産にする。

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7時間以上に及んだ見学を終え、西純矢が緊張から解き放たれたような笑みを浮かべた。「(テンションが)上がりました」。午前8時半ごろに球場入り。早出特守の時間帯から、まもなく飛び込むプロの世界に視線をこらし続けた。「レベルの高さを感じました。このレベルに近づけるように、この時期を大切にやっていかないといけない。1人1人の意識の高さを感じました。アップが入念だし、朝の特守とかも他の人より早く来てやっている」。球場を離れる午後4時ごろ、正直な感想をこぼした。

衝撃的な直球を目の前で見た。昼すぎ、西純矢と井上が見守るブルペンに藤浪が入ってきた。乾いたミット音が響く。56球。そのすべてを捕手後方から見続けた。「すごく威力があってめちゃくちゃ速いなと思った。指にかかった真っすぐ、すごかった。キレがすごい。高校生の自分ではかなわないレベル」。藤浪は今季0勝に終わったが、秋季キャンプで山本昌臨時コーチ指導のもと、腕を立て振りにするなど見違える進化を続けている。最速154キロを誇る西と同タイプの本格派右腕。復活の道を突き進むドラフト1位の先輩の投球に目を丸くした。

ただ、驚くばかりではなかった。「自分の持ち味の直球、もっとリリースを強く離すことで少しでも近づけるのかな、と。すごく勉強になりました」。早くも吸収しようとする姿勢をみせた。さらに、プロ入り後、先輩に質問したいことも具体的に描いている。「自分は制球が一番の課題。どんなことを意識しているのか聞けたら、と思う」。1年目から1軍で投げることを目標に掲げる。藤浪も同じ高卒入団で1年目に10勝を挙げた。まさに、お手本のバイブルだ。

キャンプ見学は10日までの2日間。「月曜日(11日)からまたしっかりと練習をしていかないと」。高校に帰った後は、この日の強烈な刺激を練習に生かす。貴重な経験を胸に、プロで羽ばたく準備を重ねる。【松井周治】

○…西と井上の2人は、トレーニング講座も受けた。室内練習場にあるトレーニング室に入り、来年1月の入寮後に始まる新人合同自主トレで予定される内容をいち早く体験。新人選手にはメニューを説明するDVDが配られるが、球団関係者は「DVDだけを見るより、実際にやってみた方がイメージしやすいと思う」と説明。入寮まで残り2カ月の準備期間を充実させるための試みだった。