世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、台湾プロ野球がいち早く開幕する。今季初戦予定だった11日の楽天-中信兄弟(桃園)は雨天中止となったが、今日12日の2カードで仕切り直す。

世界のプロ野球リーグで最も早く開幕にこぎ着けた中華職業棒球大連盟(CPBL)を、日刊スポーツが直撃。感染症の脅威にさらされるなか、開幕できる理由に迫った。また、すでに3月17日に開幕した2軍や台湾の現状を、元阪神で中信兄弟の林威助2軍監督(41)に聞いた。【取材・構成=酒井俊作】

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世界のスポーツ界がウイルス禍で苦しむ中、台湾プロ野球がトップを切って開幕する。11日の新球団楽天と中信兄弟の初戦は雨で流れたが、12日に仕切り直す。日本プロ野球も米大リーグも新型コロナウイルス拡大で開幕日が不透明だが、プロ野球リーグで最速のスタートだ。CPBLの呉志揚コミッショナーが意義を説明した。

「しっかりと対策を練ってシーズンを開幕することで、国民やファンに元気や勇気を与えられるよう、前進して台湾プロ野球としての社会責任を果たしたい」

台湾は当初、3月14日に開幕予定だったが感染予防を最優先して、2度延期。台湾球界史上最も遅い開幕だが世界に先駆ける。CPBL宣推部幹部は「まずは台湾が爆発的な感染拡大状況ではないこと」を理由に挙げた。11日昼現在で感染者385人、死亡者6人にとどまる。こうした日本や米国とは違う情勢を鑑み、政府の衛生福利部(保健省)と各開催地の自治体が協議。CPBLも中央感染症指揮センターが定めたガイドラインに基づいて感染症対策計画を策定し、オープン戦期間中は選手や関係者の体温計測などを徹底した。

無観客試合だが、ファンサービスに熱を入れる。台湾野球はチアガールズの華々しい応援にファンがつく名物ぶりで、この日もスタンバイ。試合中も本拠地チームのメンバーが客席で盛り上げる。同幹部は「お客さんを入れないのでチアガールズの前に集まる行動による接触リスクがない。最近、話題になっているし、パフォーマンスや野球のエンターテインメントとして、テレビで観戦されている野球ファンに楽しんでいただきたい」とPRした。

政府の外出禁止令発令や選手や関係者が感染した場合は試合中止になるが、例年通りに前後期制の120試合実施を目指す。同コミッショナーは「球団と選手の記録は大事です。目標を持って、そこに向かって努力を続け、全120試合を完全に消化したい」と語気を強めた。