日刊スポーツは、今年15周年を迎えたソフトバンクの過去の開幕戦を振り返る「あの頃の開幕戦」企画を随時お届けします。第1回はダイエーからソフトバンクに替わった初年度の2005年(平17)3月26日、ヤフードーム(現ペイペイドーム)で行われた日本ハム戦。見事な逆転勝ちで、先発した和田毅投手(39)が「ソフトバンク初の勝利投手」となった一戦です。

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15年前の開幕戦は、若かりし左腕が記念すべき「ソフトバンク1勝」をもたらした。先発は当時プロ3年目の和田。日本ハム相手に7回2/3を投げ、5安打1失点。7回にセギノールに打たれたソロ1点に抑えた。その裏に柴原の逆転3ランが飛び出し、8回もマウンドへ。ピンチを招いて降板したが、ソフトバンク初年度の開幕戦で、見事な仕事を果たした。

絶対的エースだった斉藤和巳投手(42=現野球評論家)が故障。回ってきた大役でチームの危機も救った。

和田 (斉藤)和巳さんの分も、という気持ちを持って投げました。見えるところに(斉藤さんが)いたので、一緒に投げている感じで投げました。

日刊スポーツ評論家だった故稲尾和久氏は、こう評している。「プロ3年目にして、開幕投手の名に恥じない投球をやってのけた。チームにとっても、和田のこの日の経験は、将来的に大きな財産となるだろう」。西鉄で276勝を挙げた大エース、「神様仏様稲尾様」も、和田の将来の活躍を予言していた。

翌日の日刊スポーツ1面(西部最終版)は、開幕戦勝利を祝うドーム内の花火を見つめる孫正義オーナー(62)の後ろ姿がメイン写真を飾った。ダイエーが本社の経営問題から身売りされ、ソフトバンクが買収した1年目。福岡の球団にも新しい時代が始まった。ダイエー時代も99年、00年、03年とリーグ優勝を果たしたが、さらに進化した常勝軍団への変身を予感させる船出。孫オーナーも初観戦初勝利に大興奮だった。

孫オーナー 最高。ドキドキしながら見ていました。これほど興奮したのは初めてです。志はでっかく、1歩1歩踏みしめながら頑張ります。

ソフトバンクとなって15年間でリーグ優勝は5回、日本一は6回と輝かしい歴史を刻んできた。その「第1歩」も、華々しいスタートを切っていた。【浦田由紀夫】

○…開幕戦のスタメンには、懐かしい選手が名を連ねていた。昨年秋に球団会長付特別アドバイザーに就任した城島健司が5番捕手。翌年から米マリナーズに移籍したため、この開幕戦がホークスでの最後の開幕戦となった。前年オフに井口資仁(現ロッテ監督)が米ホワイトソックスへ移籍したが、1番には近鉄からFAで獲得した大村直之が座り、3番には当時メジャー通算214本塁打で約16億円かけて獲得したトニー・バティスタが座った。

○…芸能界の豪華なメンバーも開幕戦に花を添えた。始球式を務めたのは、当時からソフトバンクCMに登場していたタレント上戸彩。上戸と同じ事務所の米倉涼子、菊川怜、石川亜沙美、田丸麻紀の4人も、選手入場の誘導や両チーム監督への花束贈呈を行った。今では勝利した試合後の「定番」で、福岡県出身の歌手藤井フミヤが作詞、作曲、歌唱の「勝利の空へ」はこの年に完成した。

◆ソフトバンクの05年シーズン 1月に王貞治監督(現球団会長)が取締役副社長兼GMに就任。開幕5連勝とスタートダッシュに成功した。さらに6月14日の交流戦の横浜(現DeNA)戦から7月6日の楽天戦まで、破竹の15連勝をマーク。89勝45敗2分けで王ホークス最多勝利を達成し、シーズン1位となった。しかしプレーオフ第2ステージでロッテに2勝3敗。2年連続のプレーオフ敗退で、リーグ優勝を逃した。