広島西川龍馬内野手(25)が曲芸技で突破口を開いた。阪神との練習試合(マツダスタジアム)で先制打を含むマルチ安打を記録。前回対戦で4回2安打無得点に抑えられた青柳に対し、「待球」で揺さぶると、5回にはワンバウンドのボール球を左前に運ぶ一打で一挙4得点の猛攻を演出した。

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指示に反した打撃から、先制点は生まれた。5回1死二、三塁の好機で西川の本能が働いた。フルカウントからの低めボール球に反応。ホームベース手前でワンバウンドした悪球に、角度よくバットを合わせて左前にはじき返した。マウンドの青柳は驚きの表情を見せる。三塁走者が悠々と生還。この回4得点の猛攻を呼んだ。

前回4回2安打無得点の変則右腕の攻略に、朝山打撃コーチは低めの見極めを指示。西川は2打席目までバットを振ったのは1度だけで、2四球を選んだ。3打席目もフルカウントにした。青柳に1人で投げさせた19球目に対し、2スイング目が曲芸打ちとなった。「我慢したけど欲が出てしまった。得点圏だったので。反省です」。指示を守り切れずに思わず舌を出したが、驚きの一打が決勝打となった。

強引な打撃に見えるが、準備してきた結果だ。フリー打撃でボール球を見送る選手がいる中、多少のボール球でも振り、しっかりとフェアゾーンに打ち返す。西川にとってのストライクゾーンの定義は「打てそうと思ったところ」。昨年6月16日楽天戦でも捕手の手前でバウンドするボール球を決勝打にした実績もある。佐々岡監督も「あれは龍馬にしか打てないからね」と認めざるをえなかった。

昨季は1番を主戦場としたが、今季は同学年の鈴木誠の前後を打つことを期待される。さらなる飛躍を求めて、自主トレ期間中から打撃を動画に保存し、左の好打者の日本ハム近藤とLINE(ライン)で打撃論を交わした時期もあった。「チーム事情もあるし、行けと言われたところで行きます」。得点機で見せた打撃の「本能」は、中軸としての自覚の表れでもある。【前原淳】