一体感野球で変則右腕を攻略した。

広島西川龍馬内野手(25)が阪神との練習試合でワンバウンドのボール球を先制打にする曲芸打ちで一挙5得点の猛攻を呼んだ。序盤から「待球作戦」やバントなどで前回封じられてた青柳を揺さぶると、5回にはクリーンアップに3者連続適時打が飛び出した。佐々岡新監督が掲げる一体感ある攻撃で大勝した。

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この日の2スイング目だった。5回1死二、三塁の好機で西川はフルカウントからホームベース手前でバウンドした悪球に反応した。うまくバットを合わせて左翼前にはじき返し、先制点を呼び込んだ。1打席目は1球も振らずにフルカウントから歩き、2打席も5球見てフルカウントとして1球ファウルの後に四球を選んだ。3打席目まで1人で19球を投げさせた待球からの曲芸打ちで青柳攻略の突破口を開いた。

前回4回2安打無得点と抑えられた変則右腕をチームで攻略した。「1イニング1個くらい四球を取るくらいでいこう」。朝山打撃コーチは試合前練習の円陣で下手投げ特有の浮くような球の軌道に低めの見極めと粘りを徹底させた。新打線の中軸を担う西川と鈴木誠が実践した。鈴木誠も2打席続けて四球を選び、2打席で投げさせた球数は11球。先制打直後の3打席目にはカウント2-2からの直球を中堅にはじき返して、攻撃を勢いづけた。

前回1打席で6球以上投げさせた選手が2人だったのに対し、この日はのべ7選手が1打席で6球以上を投げさせた。さらに田中広や野間が何度もバントの構えで揺さぶり、待球で5回まで106球を投げさせた。広島打線は練習試合再開後、22イニング連続無得点もあり、43イニング連続タイムリーなしと1発に頼る攻撃も目立った。この日は一転、1発なしで適時打5本。地味に見えるが、ボディーブローのような攻撃でダメージを与え、5回から7回まで一気にたたみかけて8得点。チームが束になったときほど広島打線の威力は増す。

佐々岡監督は「しっかり球数を投げさせて、前回の反省を生かした中での攻撃だった」と攻略までの一体感をたたえた。打順は「まだ分からない。いろいろ試しているところ」と話すが、主砲鈴木誠とともに中軸に成長した西川への信頼は不変。高い打撃技術だけでなく、自己犠牲もいとわない2人の若きスラッガーが今年の打線を引っ張っていく。【前原淳】

 

◆主なワンバウンド打ち オリックス・イチローが00年、ロッテ後藤のワンバウンドしたフォークを、ゴルフスイングのような軌道で右前打。巨人松本は09年、横浜寺原のスライダーにバットを止め右翼線二塁打に。中日投手の山内は10年、オリックス木佐貫に対しゴルフのアプローチショットのようなプロ初安打で2打点を挙げた。最近では18年にヤクルト雄平が巨人山口俊のフォークをすくい上げ右前打を放っている。