大阪桐蔭・西谷浩一監督(50)も藤浪の692日ぶりの勝利を喜んだ。

「弱音を聞いたことはありませんが、焦って、もがいていたと思う。今日もいろいろな方に支えてもらって勝てた。身内なので陰ながら応援しています。ここを再スタートにしてほしいです」。

高校3年時に甲子園春夏連覇を達成し、プロ1年目に10勝。野球の王道を歩いてきたと周囲は見るが、3年間を見守った恩師の見立ては違う。「藤浪は不器用です。春夏連覇してエリート的に思われますが、努力して努力して、という子。どちらかというと1年目が順調に行きすぎていたように思います」。入学時のフォームも、きれいに整っていたものではない。主力投手が故障で投げられなくなった時、けがをしない藤浪にいつも出番が回ってきた。連投もいとわない丈夫な体が、結果的に偉業につながった。

今年の1月。例年のように母校を訪れた藤浪を中心に、温かな輪が出来た。「S…。びっくりした、ストライクって書いてあるのかと思ったわ!」。グラブに刺しゅうされた「SHINTARO」の文字を、大阪桐蔭のスタッフが「STRIKE」と読み間違え。何げない会話から笑いで包まれた。「藤浪はいじられキャラなんですよ」と同校の有友部長は話す。今まで見てきたのは、きっと藤浪のほんの一部。この日の1勝が「再スタート」になるはずだ。【磯綾乃】