昨秋王者の青森大が5-3でノースアジア大(秋田)に勝ち、連覇に向けて好発進した。「8番二塁」でリーグ戦初先発の高井智也内野手(4年=鳴門)が人生初本塁打を含む3安打3打点の大活躍。甲子園出場も経験した高校時代からレギュラー経験はなかったが、努力を継続してきた蓄積が最終学年最後のリーグ戦で結実した。

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身長166センチの青森大・高井が、有観客のスタンドから大きな拍手を浴びた。2回表2死一、三塁、ボール気味の直球に対し、短く持ったバットを強振。「コンパクトに打つことを心掛けていた。どういう形であっても勝つという思いがヒットにつながった」。左前に貴重な先制打。一塁塁上で右拳を突き上げた。

5回の第2打席では「人生初めて」と笑顔を見せた右越え本塁打で追加点。高め直球を上から力強くたたいた。ホームランボールを右手に「四国から青森に来てまで野球をさせてくれた両親には感謝しています。プレゼントしたい」。8回にも試合を決める右前適時打を放った。

鳴門高時代は甲子園に出場したが、出番は代走などにとどまった。大学進学後も、昨春まではBチーム。練習熱心な姿が評価され、昨秋に初めて、守備固めと代打で3打席。いずれも三振だった。三浦忠吉監督(39)からもレギュラー獲得への奮起と期待から「補欠」の愛称で呼ばれてきた。Aチーム昇格後はDeNAドラフト6位の蛯名達夫外野手(22)に弟子入りを志願し、打撃力を磨いた。フリー打撃でスローボール打ちを提案されて継続。「打つポイントと、タイミングをとって強く振ることが出来るようになった」。コロナ禍自粛中もプロ入りした先輩の教えを胸に自主練習。三浦監督も「練習から手を抜かない姿勢がホームランまで打って、こんな野球人生もあるんだなあと胸が熱くなった」とたたえた。取り組みや性格も評価され、すでに強豪社会人の内定も勝ち取っている。

昨秋は16季ぶりにリーグを制したが、明治神宮大会の東北地区代表決定戦で東北福祉大(仙台6大学・宮城)に敗れ、全国舞台は逃している。高校同期には日本ハム19年ドラフト1位の河野竜生投手がおり、刺激も受ける。「勝利につながるために出来ることをやり続けたい。このチームで優勝したい」。努力の男が、全国まで導く。【鎌田直秀】