涙の数だけ強くなった-。左肘の違和感から復帰した巨人クリストファー・クリソストモ・メルセデス投手(26)が、6回2安打無失点で3勝目を挙げた。

前回登板の8月19日の阪神戦では、左肘のコンディション不良で涙の2回降板。リハビリを経て、直球は最速150キロと威力を増した。阪神に連勝し、両リーグ最速の40勝到達で2位DeNAとのゲーム差は8。今季最多の貯金18で、最短12日にマジックナンバー「38」か「39」が点灯する。

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甲子園に岡本真夜の「Tomorrow」が流れた。メルセデスは1回1死、♪涙の数だけ強くなれるよ~ の登場曲とともに打席に阪神糸原を迎えた。3球目と5球目の直球は150キロを計測。前回登板の最速は146キロで、今季ここまでの直球は140キロ台中盤だった。「今日は特にストレートをしっかり使って、コースに投げ切れたのが良かった」。初回は13球中12球が直球で3者凡退に切った。

涙の日から19日がたった。前回登板の8月19日の阪神戦では、左肘のコンディション不良で2回で降板。ベンチ裏では原監督らに涙ながらに続投を志願したが、春先に患部の違和感で離脱したこともあり交代となった。左腕の思いに胸を打たれ、目に涙を浮かべていた宮本和知投手チーフコーチは「涙の決断は正解だった。パワーアップして帰ってきてくれた」と喜んだ。

大事を取った交代のおかげで早期に回復し「虎ハンター」ぶりも復活した。昨季まで過去2年間の阪神戦では4勝0敗、防御率1・02と抜群の成績を残した。しかし、今季は試合前時点で0勝2敗、防御率4・38と苦しんでいた。この日投じた全73球中、ツーシームを含めた速球系は53球で「感触もよかったし、アグレッシブなストレートは投げられている感覚はあった」と阪神打線を封じた。この姿に原辰徳監督は「前よりもいいぐらいのリズムと投球。150キロも測定していましたし、安心しました」と言った。

復活勝利を信じてきたメルセデスは「コーチ、監督含めチームメートも喜んでくれていた。この喜びが今日だけで終わらないように、次回以降も続くように」と必ず来る“Tomorrow”以降の戦いを見据えた。【久永壮真】

◆メルセデスと宮本コーチVTR 8月19日の阪神戦(東京ドーム)でメルセデスが先発。試合前から左肘のコンディション不良を訴えており、結局2回で降板。2回の打席で代打を送られたメルセデスは悔しさからベンチで涙。続投志願するメルセデスに宮本コーチは思わずもらい泣きし、「本人は行きたいと。でも彼の体のことを思うと決断しないといけない」と気遣った。