創部2年目のクラブチーム、ハナマウイが予選初出場で本戦出場の快挙を成し遂げた。

指揮官は現役時、オリックスなどでプレーし、ロッテ、楽天などでコーチを歴任した本西厚博監督(58)。大はしゃぎする選手たちを見て「泣きそう…何てね。僕の方が緊張してました」と、うれしそうに笑った。

快勝は、試合前の“暗示”から始まった。今回の2次予選は4試合目。ここまで、負け、勝ち、負け、と来ていた。「今日は勝つしかないだろう。俺たちは、追い詰められた時は、すごいんだ。今日、負けたら終わり。だったら、どうする? 勝つしかない」と語り掛け、送り出した。

エース平野暖周投手(25=桐蔭横浜大)が6安打完封の好投。バットで引っ張ったのは、5番の林弘祐希右翼手(24=桐蔭横浜大)だ。3回に先制の左越え二塁打を放つと、1-0の5回2死一塁では「狙ってました」と初球、外寄り真っすぐを右中間へ。逆方向に豪快にたたき込んだ。さらに、8回には右前へ2点適時打でダメを押した。

林は大卒1年目の昨年は別のチームでプレーしていた。だが、所属先の活動が縮小となり、移籍を決断。できたばかりのハナマウイへ移った。「不安はなかったですね。新しいチームで、新しい仲間と野球ができる」。

ハナマウイの本業は、デイサービス。野球部員は、都内の施設で週4、5日、勤務する。1日8時間勤務だ。主に、利用者の朝晩の送迎や、施設で利用者と一緒に体操などを行うのが仕事。林は「おじいちゃん、おばあちゃんから元気をもらっています。『頑張って』『東京ドームに出てね』と言われて、励みになりました。明日、報告します!」と喜んだ。

全体練習は業務がない週2、3日に限られる。それ以外の日は、個人練習やジムでカバーする。本西監督は「仕事をやらせてもらっていること。野球をやらせてもらっていること。どちらにも感謝しないといけない」と教えている。実際、仕事がおろそかになった選手を「切った」こともあるという。限られた環境で成果を出し「時間の使い方を、ようやく覚えたのかな」と目を細めた。

明るい選手が多いのも特徴だ。林は「全く緊張しなかったです!」。本西監督は「台風の目になっちゃいましたね。ハナマウイって、どんなチームだって、言われるぐらいでしょ」と言って、また笑った。東京ドームでの本戦は、11月22日に開幕。もう1つ、大きな台風の目を狙う。【古川真弥】

◆ハナマウイ 都内5カ所に事業所を展開。デイサービスリゾートを掲げ、ホームページには「常夏の島ハワイをイメージし、ゆったりとした時間と空間をご用意いたしました」とうたう。野球部の本拠地は、千葉県富里市。