今季限りでソフトバンクを退団する内川聖一内野手(38)が1日、2軍の最終戦となるウエスタン・リーグ阪神戦(タマスタ筑後)に3番一塁で先発出場した。3打席無安打に終わり、「ホークス内川」最後の試合で快音を響かせることはできなかった。セレモニーであいさつした内川は「今年1打席も1軍でチャンスをもらえなかったことが、野球を辞める決心がつかなかった。まだまだ終わらせることはできない」と、あらためて現役続行の意思を示した。

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希代のバットマンにとって、野球人生の「終わり」ではなく、新たな「始まり」のラストゲームだった。天高い秋空の2軍戦。試合直前、内川は一塁側ベンチでビニールに包まれた新しいバットを取り出した。

シートノック後の円陣では、輪の中心で次代を担う若手たちに約3分、熱く思いをぶつけた。「ここにいる選手は頑張らないと。ホークスとしてつながっていかない。プロとして目指すところはここ(2軍)ではない」。第2、いや、第3の人生を歩む自らへの呼びかけでもあった。

打席に立つたび、スタンドからは大きな歓声が上がった。初回の1打席目。阪神西純の直球を強烈なライナーではじき返したが、センター真正面への当たり。2打席目は遊ゴロ。5回2死走者なしの3打席目は、1度もバットを振らず四球で歩いた。代走野村が告げられ「ホークス内川」のいキャリアは終わった。

試合後、最終戦セレモニーでマイクの前に立った。ホークス人生を振り返り、声を詰まらせる場面もあった。10年オフに横浜(現DeNA)からFA移籍。王球団会長の口説き文句だった「そのままの君で来てくれたらいい」を思い出したら、目が潤んだ。

「まだまだやれるとか、まだ勝負したいという気持ちより、今年1打席も1軍でチャンスをもらえなかったということが、野球を辞める決心がつかなかった」。現役最多2171安打を放ち、移籍からリーグV4度、日本一6度に貢献した功労者。屈辱的ともいえるこの1年間を振り返れば、バットを置くわけにはいかない。「プロ20年やってきたけど、まだここで終わらせるわけにはいかない」。38歳は、あらためて気持ちを奮い立たせた。「ヒットを打つ喜びとか、打席に立つ緊張感にまだまだ続きがあるんだと。ユニホームは変わると思うが、ワクワクします」と前を向いた。

内川獲得に興味を示す球団は複数ある。プロ21年目へ、内川はリスタートを誓っている。【佐竹英治】