唐川侑己投手(31)の4球なくして、ロッテのCS出場決定はなかったかもしれない。

1点リードの6回2死満塁で、5番手としてマウンドに上がった。打席には第1打席で適時打を放った西武の9番呉念庭。上位打線に回したくない状況だ。

初球、143キロのカットボールが内角をえぐった。空振り。「初球だけ良かったです」という自画自賛の1球だった。似た球で2ストライクとし、外に1球。最後は外にズバッと145キロで空振り三振。バットに当てられたくない場面を、バットに当てさせず切り抜けた。

捕手田村はガッツポーズするも、唐川はクールを貫く。「本当はガッツポーズとかする場面なんですけど、初球以外はあまり良くなかったので」とひょうひょうとベンチへ戻った。143キロ、143キロ、141キロ、145キロ。全てカットボールだった。

直球と球速が変わらない、唐川の“魔球”だ。左打者の懐にキュッと食い込む。特徴は「それほど曲がらないというところですかね」と言う。「曲げようと思えば、もうちょっと曲がりますけど、あまり求めていないというか。(バットの)軌道を外せればって感じですね」と、あえての小さな動きで好リリーフを続けてきた。

長いシーズンで、対応する打者も増えてきた。3日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)。6回に松田宣に逆転打を浴びた。カットボールを中心に6球攻め、最後に投じたカーブを引きつけられ、センターへ運ばれた。「最後に松田さんにカーブを打たれて、後悔してたのもあります」と明かす。

それ以来の登板となり、安心感を取り戻す必要があった。田村と確認を重ねてから西武打線と相対した。「中途半端にならないように、自分の考えだけはクリアにしていこうと思ってました」。己を貫いて全球カットボールでピンチを脱すると、その裏に味方打線が決定的な3点を追加した。緊迫の場面で、この上ない仕事だった。【金子真仁】