開幕ダッシュ失敗を7月反攻でもり返した矢野阪神2年目の戦いは、夏場以降も苦難の連続だった。8月は月間貯金1。巨人との2カード6試合で1勝5敗。この月はG戦以外にカード負け越しが1度しかなく、直接対決で引き離されたことが痛かった。そして9月末、チームは大きく揺れた。

衝撃が走ったのは9月24日と25日。その直前まで1軍同行していた選手の新型コロナウイルス感染が判明。それを受け、首脳陣や選手、スタッフらのPCR検査が実施され、さらに4選手らの感染が確認された。濃厚接触者、さらに球団独自の濃厚接触者扱いとなったメンバー合わせ、10人が出場選手登録を抹消された。そこから4カード13試合で6勝6敗1分け。すでに巨人に優勝マジックが点灯し、10ゲーム差以上離されるなど、リーグ優勝は厳しい状況に立たされていたが、最後の追い上げは実現できなかった。

だが、一方で「明」が交錯した時期でもある。その大量離脱期間で負け越さず、2位を守り続けた。球団史上初めて外国人8選手をそろえたことのプラス面が出た。勝利の方程式の中軸メンバーを欠いた中、右肩のコンディション不良で開幕直後に離脱したエドワーズが、9月21日に1軍復帰。中継ぎの一角として力を発揮した。7月中旬以降ストッパーとして定着していたスアレスは9月の月間防御率が0・64とさえわたった。

コロナ禍の大量離脱期間に象徴されるだけでなく、振り返ればシーズンを通して助っ人陣も競争、補い合った年でもあった。エドワーズ不在期間はガンケルが中継ぎで奮闘。打線を見ればマルテが7月上旬に負傷離脱。だが、開幕メンバーから外れたサンズが6月下旬に1軍登録され、7月に月間打率3割2分1厘をマークするなど、軸を担う存在となった。

今季チームの最大連敗は4で、それも1度だけ。大型連敗しない力はあった。【松井周治】