13年ぶりの初戦突破を果たした四国銀行の選手たちの中で、主将の柴田一路外野手(26=高知大)は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

「(11カ月前までは)野球をやれているとは思っていなかった。奇跡です」と、かみしめた。

奇跡の復活を東京ドームで証明した。昨年、12月25日に倒れ検査を受けたところ、脳腫瘍と判明。手術は成功し、後遺症もなく懸命にリハビリに励み7月にチームに合流。「都市対抗予選から試合を意識して練習してきました」と、この舞台を心の支えに練習に取り組んできた。

病気が野球観を変えた。「野球を俯瞰(ふかん)して見られるようになり、病気になったことはありがたいと思った。病気になったことで、考え方がガラッと変わった。そういう面ではプラスに働いたと思います」と前向きに捉えている。 チーム全体を見て、今、何が必要で、その中で自分は何をすべきかを考えるようになった。2回裏には2死から狙っていた真っすぐを右前に運んだ。得点にはつながらなかったが、主将の一打にチームが奮起。3回裏、山中大地外野手(29=慶大)のソロ本塁打につなげた。

「まだ完全に(調子は)戻っていない」と言うが、2安打を記録。「本当に出来すぎだと思います」と笑顔を浮かべた。「目の前の試合を1戦1戦大事に戦うだけ。常にチャレンジャーの気持ちです」。奇跡を大きな力に変え、柴田の挑戦はまだ続く。