ソフトバンク担当記者による随時連載企画「期待しタカ~」。21年投手陣では椎野新投手(25)の大ブレークを期待したい。

昨シーズンは12試合登板で防御率5・73に終わり、8月のロッテ戦ではサヨナラ暴投の屈辱も味わった。長身剛腕が、生まれ変わった姿で飛躍する姿が見たい。

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あの千葉の夜を、椎野は忘れることはないと思う。昨年8月20日、ZOZOマリンでのロッテ戦。延長10回表に2点を勝ち越すも、その裏に同点2ランを浴びて、ロッテの押せ押せムードの中、延長10回裏2死一塁で登板した。完全アウェー状態での登板で、四球の後に自らの暴投でサヨナラ負けを喫した。歓喜するロッテナインの横で、ぼうぜんとする椎野の姿があった。翌日、2軍に降格した。

「ピンチでの投球を課題にしていきたい」。昨年12月、契約更改時の椎野のコメントだ。役割としては中継ぎとして、主にリードされている場面での起用が多かった。経験を積み、結果を残していって、首脳陣に信頼され、勝ちパターンでの登板を勝ち取らないといけない立場だった。前述のロッテ戦のように相手に勢いがついている状況で登板して「火消し」ができなければ勝ちパターンへの「昇格」もない。「どんな登板だったとしても、次の日はしっかり切り替えられるようになりたい」と精神面の成長も課題に挙げた。

今季に向けては球速アップのために、ウエートトレーニングに取り組んだ。食事制限などでいったん体重を3キロほど落とした上で「同じ96キロに戻すが、筋肉がついた中身が違う96キロにしたい」。プライドも捨て、年下の杉山に「どうしたら速い球が投げられるか聞きたい」と“弟子入り”も志願した。「キャンプのシート打撃に入るころには150キロを超えられたら。直球をどんどんアピールしていきたい」と長所を伸ばしてキャンプに臨む。

昨年は12試合に登板し、1勝1敗。防御率は5・73に終わった。「今季は50試合で防御率2点台前半。最終的には自己最速155キロを出したい」。196センチの長身を生かした剛速球が、今季こそ相手をねじ伏せる投球になることを願う。【浦田由紀夫】