惜しかった。東大は昨秋優勝の早大に9回0-0で引き分け。打線は2安打無得点に抑えられたが、投手陣が奮闘した。2番手のサイド左腕、小宗創投手(4年=武蔵)は最初のイニングの4回以外は走者を背負ったが、9回まで6回2安打無失点の粘り腰だった。17年秋から続く57連敗は止められなかったが、昨秋立大1回戦以来の引き分けでポイント0・5点を獲得。早大戦の引き分けは11年春の2回戦以来だ。前日無安打で敗れた慶大は、11安打7得点で法大に雪辱した。

 

   ◇   ◇   ◇

 

引き分け以上確定まで、あと1人。9回表2死二塁、当たっている早大・蛭間を迎え、小宗は捕手の松岡泰と確認した。「勝負しよう。抑えたら攻撃につながる」。狙い通り、外のスライダーを振らせ三振。激しくガッツポーズした。裏の攻撃。先頭が四球を選び、送って1死二塁でサヨナラのお膳立ては整った。が、後続が倒れた。

喜びはなかった。チーム全員の思いを代表するように、大音周平主将(4年=湘南)は「去年の引き分け(昨秋の立大戦)は追い付いてのもの。ムード的にも『よくやった』というのが出た。今日は、そう思っている人は1人もいません。2戦どっちも勝ちきるつもりだったので」と悔しがった。前日は最大6点差から追い上げるも1点届かず。この日はスコアレスドロー。投打がかみ合っていれば、という無念が残る。

1月の緊急事態宣言発出で、チーム練習再開は3月8日と遅かった。他の5大学がオープン戦を重ねる傍ら、個々で鍛えるしかなかった。再開後は学生コーチを交え、戦術面の見直しに着手。何がベストか、データを基に検討を重ねた。前日の2盗塁に続く1盗塁と、機動力という選択肢が増えた。大音は「まだ隠しているものがある。これからです」。まず1勝へ、引き出しはある。

勝利への手応えを問われた井手峻監督(77)は「抜ける時はスッといく。粘りきっていくしかない」と答えた。トンネルの終わりが見えつつある。【古川真弥】