楽天早川隆久投手(22)は、開幕3戦目でプロ初勝利を挙げ、18日の日本ハム戦では8回1失点で2勝目を挙げた。鳴り物入りで早大からドラフト1位で入団したルーキーは、プロ入りに当たって、この半年ほどの間にどんな成長を見せたのか。昨年10月にも「解体新書」で連続写真を分析した上原浩治氏(46=日刊スポーツ評論家)は、わずかな変化に着眼した。

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プロ入り前の昨年10月24日の紙面で、早川の投球フォームを『解体新書』でやらせていただいた。当時も完成度が高いフォームで“即戦力投手”と断言させてもらったが、プロに入ってからも順調そう。今回の投球フォームはオープン戦での投球で、それほど大きく変わった箇所はない。開幕してから先発した試合も見たが、早大時代と実際に見た個人的な視点を組み合わせ、解析してみよう。

まず、セットポジションから右足を上げきる(1)~(3)までを比べてみよう。プロ入り後の方が早大時代より少しだけ高く上がっている。早大時代は右足の付け根の部分を折って上げていたが、プロ入り後は右の骨盤ごと上げている感じで。この方が、軸足の左足に体重が乗りやすい。右膝の曲がる角度も広くなっている。右スパイクの位置を一塁側に突き出すようにしているのは、かかと体重になって“担ぎ投げ”のようにそっくり返らないように工夫しているのだろう。

ただ、プロ入り後の(3)~(5)までの流れを見ると、頭だけが捕手側に突っ込みそうな雰囲気が出ている。(6)で左膝を外側に割るように使って上半身の突っ込みを抑えているが、この部分はオープン戦が終わって修正できていた。開幕後、実際に投げている動きを見る限り、上半身が突っ込む気配もなく、下半身にしっかり体重を乗せて投げられていた。

わずかだが、(7)での違いもある。早大時代はやや左肘と左肩が背中側に入り過ぎていた。しかしプロ入り後はそれほど後ろに入れないでトップの位置までボールを上げていけるようになっている。左肘が背中側に入り過ぎると、腕を振っていくときに右肩が開きやすくなるが、これぐらい収まるといい。(8)の姿を比べてみても、早大時代よりそっくり返っていない。ベルト付近の下半身を比べても、力強さが違う。しっかりと下半身の力を使って投げられている。

早川のフォームで、一番特徴的なのが(9)の左腕の“しなり”だろう。ボールを持つ位置が頭の後ろに隠れて見えないが、普通ならもう少し二塁のベース方向に近い位置になり、ここまで隠れることはないだろう。この部分がいいのか悪いのか正直、私にはよく分からない。投げる方向に対して“しなる”のはいいと思うが、頭の後ろ側から“しなる”ということは、腕を振っていく過程でボールがすっぽ抜けそうな軌道になりそうな気がする。それを抑えるために、必要以上に力を入れないといけなくなりそうで、その分、余計なスタミナをロスする可能性はある。

ただ、投球フォームは、人とは違う部分が武器になるもの。みんなが同じフォームなら、それだけ打者が慣れてしまう。早川に限らず、今の若い選手は小さいときからいろいろな柔軟運動が指導されていて、肩肘の関節が柔らかい。武器になっているなら、直す必要はまったくない。

投球で一番、大事なのが(10)のリリースをする瞬間。ここまで流れを見ていても、プロ入り後の方が右肩の開きが抑えられていて、強いリリースができている。(11)~(13)までの左足の動きも、良くなっている。早大時代は右足でブレーキをかけ過ぎ、左足が前に出てこなかった。しかしプロ入り後は(12)で蹴り上げた左のスパイクが跳ね上がり、(13)でも左足が前に出ている。体重移動がスムーズになっている分、振り切った左腕も跳ね返るように戻っていて躍動感もある。注意して見ないと分からないが、確実に良くなっている。あとは1試合を乗り切るスタミナとシーズンを乗り切るスタミナをアップさせれば、かなりの勝ち星を挙げられるだろう。(日刊スポーツ評論家)