阪神19年ドラフト3位の及川雅貴投手(20)が2番手で登板し、ラッキーなプロ初勝利を挙げた。試合は壮絶な打撃戦で9-8。1点リードを守り切った守護神スアレスからウイニングボールを手渡されると、笑顔がはじけた。「こういった形で初勝利するとは思っていなかったので、少しビックリです」。

初登板から中1日での2試合目。出番はすぐにやってきた。プロ初登板初先発のドラフト5位村上が3回に勝ち越しを許し、なおも1死二塁で救援。呉念庭に適時二塁打を浴びたが、その後2死満塁にしても動じず、9番山田を右飛に仕留めた。「すごい乱打戦で点は取られはしましたけど、次の回(4回)は無失点に抑え、勝ちパターンの方々にしっかりつなげられたかなと思います」。1回2/3を2安打2四球無失点。5回の梅野の勝ち越し2ランで白星が転がり込んだ。

入団時から楽しみにしていたあの選手との対決もあった。スーパー中学生として有名だった及川は、中3の冬、「ビートたけしのスポーツ大将2017」に出演し森と対戦。当時の直球は130キロ台で、変化球を中前にはじき返された。あれから4年。収録の舞台と同じメットライフドームでプロ同士の再戦が実現。4回無死二塁、外角に得意のスライダーを3球続け、投ゴロに仕留めた。「特別意識はしていなかったけど試合が終わって、抑えることができてリベンジできたかな」と球界を代表する打者に成長を見せつけた。

矢野監督は「及川も先発させてやりたいけど、中継ぎもいい勉強になる」と、近い将来は先発で戦力になることを期待している。横浜高時代は佐々木朗(ロッテ)、奥川(ヤクルト)、西純(阪神)と「高校四天王」と称された。初勝利は3人に先を越され、自身は中継ぎでのラッキー勝利だったが、プロでのライバル物語は始まったばかり。及川も「同級生が活躍するのは目に入ってくる」と切磋琢磨(せっさたくま)を誓う。遅れてきた最後の四天王が、一気のブレークを目指す。【石橋隆雄】

◆高校四天王 19年の高校野球で注目を集めた星稜・奥川恭伸(ヤクルト)、大船渡・佐々木朗希(ロッテ)、創志学園・西純矢、横浜・及川雅貴(ともに阪神)の本格派投手4人の呼称。甲子園に3度出場した左腕及川、19年夏に準優勝した奥川、高校球界最高の163キロをマークした佐々木朗、力強いガッツポーズも話題になった西純と逸材ぞろい。19年ドラフトでは3選手が1位、及川も阪神の3位とそろって上位指名された。同年代にはほかにもオリックス1位の宮城大弥(興南)、野手でも中日1位の石川昂弥(東邦)、DeNA1位森敬斗(桐蔭学園)ら将来を嘱望される選手が多い。なお、オリックス宮城は昨年、12球団の高卒新人で唯一の勝利を記録し、今季はここまで5勝をマークし、防御率2・32でパ・リーグトップ。