<日本生命セ・パ交流戦:楽天5-6阪神>◇13日◇楽天生命パーク

阪神近本光司外野手(26)が、9回に決勝の適時三塁打を放った。2死走者なしから9番梅野が四球で出塁し、近本への2球目に二盗を決め、送球がそれる間に三進。近本は追い込まれてから、楽天松井の128キロスライダーを捉え、一塁線を破った。8回に藤浪が同点弾を浴びた直後の決勝打。頼れる背番号5がチームを救った。

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「メタ認知って知ってますか?」。プロ1年目のリーグ戦中、近本は関学大時代からの個人トレーナー、植松弘樹さん(26)に問われた。「言葉ぐらいなら…」。メタ認知は「何かを実行している自分を見る、もう1人の自分」と言われる心理学用語。アスリートにとっては自己を俯瞰(ふかん)的に見つめ、パフォーマンスの向上につなげる考え方を指す。

メタ認知に取り組んで約2年。植松さんは「今の近本選手は雲の上から自分を見ているくらい、距離を置いて客観視できる」と見ている。今年3月、近本は知人を介してスポーツ系の専門学校に通う学生と会話する機会があった。「緊張ってしますか」と聞かれ、「今、緊張している自分を想像したけど、僕、緊張しないんですよ」と答えた。自らを客観視して最善策を考えられる精神面の成長も、打率2割8分1厘と好調の打撃につながっている。

9回の打席は「正直打てるかどうか分からなかった」と言ったが「何としてもバットに当てる」とやるべきことは認知していた。極限の状況で心の中の「もう1人の近本」が“助言”したのかもしれない。【阪神担当=中野椋】

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