中日柳裕也投手(27)が偉大な先輩へ惜別の勝利をささげた。

完封こそ逃したが、巨人打線から8三振を奪い、8回4安打無失点で7勝目。チームに9カードぶりの勝ち越しをもたらした。7日に母校横浜高の先輩、西武松坂大輔投手(40)が現役引退を発表。レジェンドに成長の姿をしっかりと届けた。

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中日柳が今季2度目の完封勝利を逃したが、8回107球、4安打無失点と堂々のピッチングで、勝利をつかんだ。

「1点もやらない気持ちでずっと投げた。(真っすぐが)良かった。ここ数試合ではない感覚があった」

4回に巨人の主軸を圧倒した。先頭丸には直球を見せてから125キロの落ちるスライダーで空振り三振。主砲岡本和も直球からのチェンジアップで空を切らせた。3、4番に対し、前日に1本ずつ被弾したが、この日は沈黙させた。5番ウィーラーは直球から外角低めへのカットボールで天を仰がせ、3者連続奪三振。G党で埋まるスタンドにため息をつかせた。

7日に横浜の先輩で、19年まで2年間チームメートだった松坂の現役引退が西武球団から発表された。「松坂さんが築いてこられたことに対して、僕は正直コメントできるまでの選手ではない」。5日に本人からメールで連絡を受けていたことは明かしたが、柳は慎重に言葉を選んだ。

今年1月には横浜の先輩、楽天涌井の自主トレに初参加した。きっかけは松坂で、中日在籍時代に涌井と橋渡しをしてくれた縁だ。「いいピッチングを見せたいなと、そういう気持ちは持っていました」。前回2日のヤクルト戦では4回8安打5失点KO。この日チームが敗れれば、自力優勝が消滅し、5位転落の可能性もあった。偉大な先輩への思いを胸に、右腕がチームの危機を救った。

与田監督も「(マウンドやベンチでの)立ち居振る舞いが落ち着いてきた。去年までとガラッと違う。将来のエース、球界のエースになるために必要なこと」と成長に目を細めた。チームを9カードぶりの勝ち越しに導き、柳がレジェンドのようなエース道を目指す。【伊東大介】

中日阿波野投手コーチ(柳の投球について)「チームのことも考え、初回から気持ちがこもり、1人で投げきろうという意気込みがあった。申し分ない投球だった」