なぜ今永は走るのか。「投げる哲学者」の異名を持つDeNA今永昇太投手(28)が19日、ベンチに全力疾走で戻る理由を明かした。

14日の阪神15回戦(甲子園)では7回4安打1失点で今季3勝目を挙げた。近本光司に本塁打を浴びた3回はジョギング程度だったが、その他の回はイニングを投げ終えるたびにダッシュでベンチに戻っていた。

今永は「ファームから取り組んでいた」という。同僚の石田健大投手と話し合う機会があり「いいピッチングで3者凡退とか、三振を取ってイニングを終わる時は軽快にベンチに帰ってるけど、打たれた時や失点した時は歩いて帰ってくるよね」と言われた。それまで今永は無意識だった。「全部軽快に帰ってこられたらいいね」。そんな会話が交わされ、ベンチへのダッシュが始まった。

今永は元来「打たれても抑えても変わらない姿勢が大事」だと考えている。それでも「打たれて失点したりすると、足取りが重くなる時はある」という。阪神戦の3回は、この試合で唯一、失点したイニングだった。ややダッシュが鈍り、歩いてはいないが、ジョギング程度になった。だが、4回は3者連続三振で切り抜け、再びさっそうとベンチに走って帰った。

今永は6月13日、交流戦の日本ハム戦(札幌ドーム)で今季初勝利を挙げた。この試合でベンチに走って帰ったところ、石田がベンチ裏で爆笑していた。今永が笑っていた理由を尋ねたところ「俺が想像していたより帰ってくるのが8倍速かった」と回答があった。ベンチの盛り上げ役、高城俊人捕手からもお墨付きがあった。「そういう風に帰ってきてくれるとベンチが盛り上がりやすいわ」と言われた。「ベンチもそれで活気づいてくれますし、雰囲気づくりとしても大事なことかなと感じています」と今永。だから、エースは走る。これからも。【斎藤直樹】