「第4の外野手」を狙う。DeNA楠本泰史外野手(26)がサヨナラ打を含む3安打と大暴れし、出身地の大阪で存在を強烈にアピールした。

まずは6回だ。先頭打者として打席に立つ前、冷静に状況を分析した。マウンドの山崎福也は、5回から登板し、三振、三振、右飛と絶好調だ。相手の守備隊形はどうか。一塁手がT-岡田から頓宮に代わり、二塁手も安達から大城に代わった。内野の右側は、まだ落ち着いていないはずだ。「試合の状況的にも簡単に打ち崩せる状況でなく、相手の守備が変わった場面だった。冷静にポジショニングが見えていた。打つだけでチャンスをつくるのは難しいなと思っていた」。一塁側にセーフティーバントを試みた。案の定、ベースカバーが遅れ、セーフとなった。

8回は巧打を見せた。左対左でのセオリー通り、4球目の145キロ直球を左前に流した。クライマックスは9回。3点差を追いつき、なお2死二塁。「最後まで前の打者がつないでくれたチャンスで、何とかかえすんだという気持ちだった」。5球連続のファウルで粘った後、右前へ抜けようかという二塁内野安打を放った。二塁から代走宮本秀明が生還し、しぶとくサヨナラ打とした。

この日の3安打で、エキシビションマッチは通算20打数9安打3打点、打率は4割5分と驚異的だ。「自分の立場が確約されてる選手じゃないので、エキシビションマッチはアピールするんだ、競争に勝つんだと意気込んで戦ってます。気持ちは強く持っているが、頭の中は冷静にプレーできているのがいい結果になっている」。セーフティーバントを試みる前の状況判断は、その現れだ。

DeNAの外野手は首位打者の佐野恵太が左翼、打率3位の中堅桑原将志、同4位で米国代表としても大活躍したオースティンが右翼と、穴がない。楠本は「絶対的な3人なので、食い込むという気持ちを諦めては絶対いけないと思っている。3人に何かあったら最初に名前が挙がらないと1軍にいられない。3人に追いつけ追い越せの気持ちがないと」。レギュラーが固まっている現状は認めながらも、隙あらば、あるいは何かあれば割って入る。そんな覚悟を固めている。

エキシビションマッチの打率4割5分は、いい数字ではあるが、公式戦ではないと戒める。「記録に残る数字ではないので、よくやれてるとか数えてないが、何とかしがみついて戦力になりたい」。大学ジャパンの4番打者だったが、プロで生き残るために持ち味を整理している。「ホームランをたくさん打てる打者ではない。追い込まれても食らい付いて、機転をきかせるプレーヤーでないと、人と何かが違う部分がないと勝ち抜けない。がむしゃらに食らい付く姿勢をアピールしないと」。求めるのは、きれいなヒットだけではない。

三浦大輔監督も、そんな姿勢を認めた。「本当にセーフティーで塁に出たり、逆方向に打ったり、粘りに粘って、粘りを出してくれた」。五輪の中断期間中に行われた10試合で、外野のレギュラー3人に次ぐ、若手の台頭を願っていた。「そういう期待をしていましたし、1人でもそういう選手がチームに刺激与えてくれればと思っていた」。エキシビションマッチは残り1試合だ。【斎藤直樹】