声にならないどよめきと大きな拍手が、巨人初打席に向かう背番号10に降り注いだ。日本ハムからの電撃無償トレード翌日、中田翔内野手(32)が同点に追い付いた直後の6回1死一、二塁で代打で登場。6月8日の交流戦・阪神戦以来の公式戦出場。高ぶる気持ちを抑え、DeNAの左腕・砂田からストレートの四球を選び好機を広げた。そのまま一塁守備に入り、9回の2打席目は中飛。「一からという気持ちで、明日からしっかりとやっていきたいです」とコメントした。

4日のエキシビションマッチ・日本ハム-DeNA戦(函館)前に同僚選手に暴力行為をしたことが判明し、無期限出場停止処分を受けてから10日。早期の移籍と実戦復帰に厳しい声もあるのは事実だ。だが、20日の会見での「簡単に信頼を取り戻すことはできないかもしれないですけど、野球人として、人として、しっかり前に進んでいきたい」との決意はうそではない。この日の試合前練習ではチームメートに可能かどうかを確認したうえで、左腕の打撃投手の球だけを打ち込んだ。この一戦で課せられるであろう「左投手への代打」との役割を想定し、全うすべく、今できることに集中する姿があった。

試合前の円陣では“声出しデビュー”も飾り、輪の中心でチームを盛り上げた。巨人での第1歩を踏み出した中田を、原監督は「いろんな意味で落ち着きをさらに増すでしょうね」と評した。電撃トレードから2日。長く険しいであろう復活ロードのスタート地点から、中田がリスタートを切った。【浜本卓也】