西武栗山巧外野手(29)は野球用具に頑固なこだわりを持つ。巧みなバットコントロールで安打を重ねる裏で、貫いてきた独自の道具選び。バット、手袋、グラブの用具契約を結ぶミズノの担当者にも「プロの中のプロ」と言わしめる。

キャンプ中、手袋をジッと見つめる姿があった。「これ、いつもとサイズ違うでしょ? 革のなめし方が違うような気がするんやけど」。動物の皮を使用するため、多少のズレはあるそうだが、用具担当者でも気付かないほどの誤差を的確に当てる。「革は生きものやから」と平然と言うが、その感覚は匠(たくみ)の域に入る。

今季、手袋の内側の色をネイビーから黒に変えた。ネイビーは使用する選手が少なく、革が手袋に変わるサイクルが少し長くなる。栗山によれば、ごくわずかに品質が変化するようで、それを避けるのが狙いだった。実は白も提案されたが「(革が)柔らかすぎる」と却下。担当者によれば、どれも栗山だから分かる感覚だという。

通常なら、メーカー側が柔らかくした上で持ち込むグラブも、自分で型をつける。担当者は「道具を大事にされる。試合で使うのは選ばれし勇者です」と言う。手袋は10組渡され、その中から厳選する。「一番バットに触れるところ。しっくりくるかこないか、すごく大事」とこだわる。巧の技は匠な感覚から生まれる。【久保賢吾】