高校野球が終わり、甲子園はつかの間の1日…ではなかった。プロ野球の阪神-中日が開催される31日に向け、関係者は急ピッチで“模様替え”を行った。

29日の閉会式後には、大量の土を積んだトラックがグラウンドに現れた。ホームベース付近、特に次打者席あたりのファウルゾーンへ土を継ぎ足し、阪神園芸のスタッフが整備。一、三塁のファウルゾーンにある高校野球期間限定のブルペンは、素早く撤去された。

一夜明けて30日。阪神の投手指名練習が午前10時から行われ、先発投手陣が黙々と調整を行っていたが、周囲は慌ただしかった。マウンドと本塁間でのノックが終わると、阪神園芸のスタッフが集まった。土で薄茶色に染まったホームベースを掘り起こし、真っ白なものと交換。ものの数十分で済ませ、さっそうと屋内へ去って行った。

グラウンドだけではない。スタンドには3人がかりで大きなノズルを持ち、強力な水圧をかけ座席を洗浄するスタッフがいた。内野席のみ行うといい「朝8時くらいからやっています。これは明日までかかるかもしれない」と苦笑い。今回の高校野球で内野席は一部だけしか使用されなかったが、土ぼこりや鳥のフンなどを1席1席丁寧に除去し、プロ野球ファンの来場に備えていた。

バックネット裏の記者席ではテレビ局のスタッフが大忙し。高校野球期間は、プロ野球中継とは異なる場所で各局の実況席がセットされていたため、元通りにしないといけない。「明日がデーゲームだったら泣いてました」。あるスタッフは苦笑いで作業を進めていた。高校野球からプロ野球へ。地道なプロの仕事が、また甲子園にドラマを呼ぶ。【阪神担当=中野椋】