ベンチで拍手を送る西勇に向かって、一塁ベース上でクールに右手を挙げた。阪神ジェリー・サンズ外野手(33)は、通算100勝がかかった右腕の思いに、どうしても応えたかった。

「いい投球でも、なかなか勝ちをつけることができなかったから…。今日はその場面、勝ちをつける場面で自分の仕事ができたね」

その場面とは、同点の6回1死満塁。粘りの投球を続ける西勇の代打で打席に向かった。この日は9月に入って3度目のスタメン落ち。下降気味の状態の中、ここ一番の集中力は健在だ。カウント1-1から、大瀬良こん身の外角直球を立て続けに見逃した。3-1に仕立て、高めに来た148キロを仕留めた。

「大瀬良投手も力が入ったと思うけど、得点圏にいる以上はかえすことが仕事だからね。それができてよかったよ」

勝ち越しの中前適時打で、これが決勝点となった。チームトップの63打点目は、自身4試合ぶりの打点。タイムリーにいたっては8月28日広島戦以来、10試合ぶり。さらに得点圏での代打は、今季3打席2安打1四球で打率10割の勝負強さだ。「どんな場面でもしっかり準備をすることは一緒。あの場面、出番くるかなと思っていたんで、しっかりと心と体も準備できていた」と頼もしい。

エンジンが上がり切らない日々でも、努力は怠らない。9日ヤクルト戦(甲子園)前には野手一番乗りでグラウンド入り。一番にアップを開始し、最初にバットを持った。普段行わないロングティーで黙々と打ち込みを敢行。同戦は3打席連続三振。翌日、すぐさま結果につなげた。

矢野監督は「ジェリーで何とかしてくれると思って送り出した。あそこで点が入らずとなると、またムードが重くなるんで。100勝もついたし、チームにとっても大きな1勝。ナイスバッティングでした」と絶賛した。優勝争いがますます加熱していく道中。昨季終盤10、11月の32試合で打率2割2厘、本塁打1本と失速した助っ人が、再加速の秋を進む。【中野椋】