中嶋チルドレンの象徴が、一振りで試合を決めた。オリックス紅林弘太郎内野手(19)が、1点を追う7回2死満塁で右中間へ逆転の3点適時打を放ち、三塁ベース上で真っ赤な右拳を突き上げた。

「本当に全員で追い越すぞという気持ちで。(4番の)ラオウさんに回すぞという楽な気持ちで」

“代役3番”が思いを乗せた。変則右腕の日本ハム鈴木健が投じた5球目133キロスライダーを右中間に運んだ。安達、福田、宗が生還し、一塁側ベンチは総立ち。吉田正不在の間、3番に座る紅林はここ5試合で打率3割1分6厘、2本塁打、8打点と好成績だ。

愛弟子が、指揮官に恩返しの日々だ。東京五輪でシーズン中断期間の8月上旬。気温30度を超える灼熱(しゃくねつ)の大阪・舞洲で愛あるマンツーマン指導を受けた。左足をパイプ椅子に置き、軸足のみのスイングを繰り返す。「右腰でボールを運ぶ意識。調子が悪くなると上半身で打とうと、手が先に出てしまうので」と下半身強化。トスをあげる指揮官と、かごのボールがなくなると2人で拾い、再び打ち込んだ。

汗びっしょりの紅林は「チームに迷惑をかける日ばかりで…。10日に1回ぐらいしか活躍できなくて、メンタル的にきついです…」とその日は漏らしたが、19歳が重圧に打ち勝った。

これで貯金9。首位ロッテのマジック点灯を阻止する白星で、ゲーム差を2・5に縮めた。紅林は「優勝のチャンスはある。チャレンジャー精神で頑張っていく」。合言葉は全員で勝つ-。挑戦者集団のオリックスが一体感を深めている。【真柴健】

▽オリックス中嶋監督(紅林の逆転打に)「食らいつくことができた。今まで簡単に空振りしていたのが、ああいうところでね。思い切りのいいバッターになるんじゃないかな」

◆紅林弘太郎(くればやし・こうたろう)2002年(平14)2月7日生まれ、静岡県出身。駿河総合から19年ドラフト2位。昨季11月3日楽天戦で放ったプロ初安打は、球団では89年高嶋徹以来の高卒新人初打席安打。186センチ、94キロ。右投げ右打ち。