首位に返り咲き、お立ち台でファンとともに拍手するオリックス宮城大弥投手(20)は自身の葛藤にも勝利していた。

「(19歳で)11勝するまでは投げる度に勝っている気分で、悪くてもすぐに切り替えられた。あまり勝てなくなって、悩み続けて…。悩むことはいいことじゃないなと」

緩急を生かす投球が持ち味だが、この日は初回から直球で攻めた。「押せるところは押そうと。いいゲームをつくりたかったので、初回から飛ばしてよかった」と笑顔で振り返った。

7回112球7安打1失点(自責0)の粘投で、球団左腕では97年星野以来の12勝目をマーク。8月25日に20歳の誕生を迎えてから、4試合勝てなかった。「考え方の問題。逃げるより勝負して、打たれたら打者の方が上、抑えたら打ち損じ」とシンプル思考で吹っ切れた。眠れない日は「(部屋を)真っ暗に。何も考えずにしたら眠れました」とケロリ。精神面の強さが、投球にも生きて、5戦ぶりの白星となった。

中嶋監督は「いつもより真っすぐのキレがよく、ドンドン押せていた。今まで背負っていたものが、抜けたのかな」と目尻を下げた。楽天早川、日本ハム伊藤らハイレベルな新人王争いだが、大本命の宮城は一歩も引かない。

首位ロッテに同一カード3連勝した勢いは衰えず、チームは引き分けを挟んで5連勝。9月7日以来の首位奪回だ。残り17試合。好位置で、最終コーナーを曲がってきた。【真柴健】