今季限りで退任する日本ハム栗山英樹監督(60)が26日、本拠地の札幌ドームで最後のタクトを振った。

「10年間ありがとう」。スタンドで数々の応援ボードが揺れ、背番号80との別れを惜しんだ。今季最後の西武戦は、緊迫した投手戦の末、9回1死満塁から“同期入団”の松本剛外野手(28)が押し出し四球を選んで、今季4度目のサヨナラ勝ち。指揮官の花道を飾った。

   ◇   ◇   ◇

「『ほな、さいなら』と言おうと思っていたのに…」。そう心に決めていたのに、試合後の退任セレモニーで大型ビジョンに10年間の軌跡が流れると、もう涙をこらえられなかった。“二刀流”を目指して二人三脚で歩んだエンゼルス大谷からのメッセージ動画。「あまり長くなると、監督が泣いちゃうので、この辺にしておこうと思います」と少し寂しそうに笑った愛弟子の姿に、涙腺を刺激された。

栗山監督 監督をやっていて良かったのかと、自問自答した時もあった。最後だけは、誇りを持って、このユニホームを脱げる。

ホームユニホーム姿は、この日が最後。選手たちの手で10度、宙を舞った。

本拠地でのラスト采配は、ドラマチックな展開となった。0-0の投手戦。9回1死満塁から“同期入団”の代打松本剛が、押し出し四球を選んでサヨナラ勝ち。この日、キツネらに見送られながら出勤した指揮官は「偶然じゃない。自分が愛した動物たちが、最後に『お疲れさん』って出て来てくれたんだ」と勝利の予感はあった。「野球の神様」に見守られたような展開で、最後はこの日、14年連続50試合登板を達成した中継ぎエース宮西から、記念球を手渡された。

オープン戦も含めて、今日が658試合目の札幌ドーム。10年間、通った愛着のある監督室は、宝物が詰まっていた。エンゼルス大谷をはじめ数々の選手たちからもらった記念球など、すでにほとんど私物を自宅へ持ち帰り、残すのは、壁に貼られた10年分のスケジュール表など数点だけ。きっちりと勝敗などを記入しているその表を見るだけで、思い出が胸にあふれた。

選手に寄り添った監督生活も、2試合を残すのみとなった。「入団して接した192人の選手たち。活躍をしているような選手は別にして、何とかしてやれなかったと思う選手たちが、いっぱいいる。そのことを忘れずに、これから頑張って行かないといけない」。監督業を終えた後は、道内各地への“お礼行脚”を企画している模様。「新しい形になって、強いチームになってくれると信じている」と、祈った。【中島宙恵】

▽日本ハム宮西(8回2死走者なしで登板し、プロ入りから14年連続で50試合登板達成)「ホッとした。(今季)前半は何をやっても悪循環で、この14年間で相当苦労した」