チームのためにバットを振り続けてきた男が、初の打撃タイトルを手にした。ヤクルト村上宗隆内野手(21)が39本塁打で巨人岡本和とともに、本塁打王に輝いた。

シーズン最終戦の広島戦は4三振を含む5打数無安打に終わり、打点はトップから1打点差の112打点で2位。セ最年少での2冠こそ逃したが、4番として最後まで戦い抜いた主砲はタイトルを手に、日本一を目指す戦いに向かう。

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村上が、絶対的な燕の主砲に成長した。シーズン最終戦も「4番三塁」で先発し、2年連続で全試合4番での出場を達成。チームを6年ぶりのリーグ優勝へ導き、MVPの最有力候補にも挙がる。開幕前には「プロに入って4年目。一昨年から試合に出て最下位を2回連続で経験している。最下位のチームの4番なので、そこを優勝できるチームの4番になれるように頑張りたい」と決意を示していた。その覚悟をバットに乗せ、有言実行を果たした。

打率、本塁打、打点の「全部を狙いながら」と意気込んで臨んだ今季。もう1つの有言実行=打撃タイトル獲得を果たすべく、2冠をかけて、この試合に臨んだ。しかし、第1打席から3打席連続三振。3点を追う7回1死二、三塁での第4打席は、内角高めの直球に詰まり、思わず天を仰ぐ遊飛に倒れた。そして9回1死走者なしの最終打席は空振り三振。5打数無安打4三振で終わった。本塁打は10月13日中日戦を最後に出ないまま、シーズンを終えた。

それでもリーグトップの106四球。2位とは19個差だった。打ちたい気持ちを抑えて、冷静に選球。チーム打撃に徹した結果は、リーグ4位の82得点の数字にも表れた。優勝達成時、村上は「クライマックス・シリーズを勝ち抜いて、日本一になれるように頑張ります」と力強く宣言。有言実行の男が、新たな目標を掲げた。再び歓喜を味わうため、勝負の1カ月間、日本一を目指して全力でバットを振る。【湯本勝大】