ロッテは2年連続2位でシーズンを終えた。近未来の常勝軍団構築へ、若手の台頭は必須になる。楽あれば、その倍の苦あり。今季ももがきながら、パの猛者たちに立ち向かった。先発陣の軸になった小島和哉投手(25)と岩下大輝投手(25)。同世代の2人が踏んだ「ピッチャープレート」に見えた工夫、苦悩に“潜入”する。【金子真仁】

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小島のマウンド姿に違和感を覚えたのは3月16日、札幌ドームのオープン戦でのこと。何か違う。隣の日本ハム担当も首をひねる。

「あれ? 小島って、三塁側でしたっけ?」

それだ。ピッチャープレートの最も三塁側を踏んでいる。前年は一塁側だったはず。映像も使って前後の登板も注視する。三塁側を踏む日もあれば、真ん中を踏む日も。開幕後の初先発前に明かしてくれた。

「三塁側は景色が変わりすぎたので、一塁側と真ん中でうまく使い分けて投げられたら。ゾーンに入っていく角度や軌道が、プレート半足分でも変わってくるので、そのへんまでうまく使えるように」

プロ2年目の昨季は7勝8敗。立ち上がりや大事な局面に弱かった。3年目を前に試行錯誤を重ね、引き出しを増やそうとした。

開幕から5登板連続で白星がつかなかった。小島は動いた。プレートの最も一塁側にあった左つま先を、人知れず5センチほど三塁側に動かした。半足分どころか指1本分。外角の制球が安定し、一気に飛躍した。「常に変化を求めていろいろやっています」。メンタルも強くなり、2桁勝利と規定投球回を達成した。

いつも小島とキャッチボールする岩下は、前半戦だけで8勝した。猪突(ちょとつ)猛進の裏で彼もまた、模索した。6月2日の中日戦(バンテリンドーム)。いつもプレート一塁側を踏む岩下が三塁側を踏んだ。時には同じ打者に対し1球目、2球目に一塁側を踏み、3球目でいきなり三塁側へ。その逆も。位置を変えた直後の痛打もあった。「何というか迷いがありまして」。

勢いも前半戦最後の7月13日西武戦(メットライフドーム)で止まった。勝利投手にはなったが5回7安打、奪三振はゼロだった。

「普通に合わせられたイメージが。それが強く残ってぬぐいきれなかったというか、怖いものが多く見えちゃったのかなと」

めっきり勝てなくなり、再調整後、先発復帰戦ではプレート真ん中を踏んだ。「何も証明できていないマウンドがずっとなので。何か変えなければいけないっていうのが強くて」。

明るい岩下が迷い続けた1年間。「正直、まだ吹っ切れてないですけど僕の中で終わり切れてない部分があるので。しっかりと気持ちの入った投球ができれば」。最終登板となったCSファイナル。一塁側を踏みしめ、オリックス相手に本来の力強さを見せた。

もがいた足跡が、明るい未来につながる。