強心臓ゆえの、この結果か。広島ドラフト1位の黒原拓未投手(22=関学大)が対外試合初登板を3者連続三振で1回無失点。これ以上ない内容、結果で周囲の不安を払拭(ふっしょく)した。

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「不安」が生まれたのは15日のシート打撃のこと。打者11人と対戦し、8安打。プロの洗礼を浴びた。大学時代から無走者でもクイック投法で投じてきたが、かえって、打者がタイミングを取りやすくなっているのではと、佐々岡監督から指摘を受けた。左腕は「まだ1年目。本当にここからいろいろ学ぶことばかりだと思う。もっと失敗重ねて成長していければ」と落ち込むそぶりなどみじんも見せなかった。むしろ失敗を糧に成長につなげた。

思えば強固な精神は随所で見られた。1月初旬に広島・廿日市市内の大野寮に入寮した際、大瀬良や森下、栗林らが過ごした“出世部屋”が割り当てられたが「部屋どうこうでなく1軍で活躍できれば」と、縁起の良さにあやかる姿勢すら見せなかった。

1次キャンプの宮崎・日南でも思いもしないプロの世界を見せられた。当時のクイックモーションでは腹と胸の前で2回セットポジションをつくっていることになり、ボークを審判に指摘された。だがドラ1左腕は「1度止まらなければいい。そんなに(改良は)難しくない」ときっぱり。思わぬ障壁もサラリとかわして見せた。

数日前に打ち込まれた最速152キロ左腕だが、この日は一転フェアゾーンに1球たりとも飛ばさせなかった。「結果が出たといってもまだ1試合、1イニング。バッター3人しか投げていない。ここで一喜一憂せずに」。強心臓を誇る黒原はちょっとやそっとでは、動じない。【前山慎治】