連続写真で選手のフォームをひもとく「解体新書」。今回はヤクルト村上宗隆内野手(22)、日本ハム清宮幸太郎内野手(22)、楽天のルーキー安田悠馬捕手(22)を日刊スポーツ評論家の和田一浩氏(49)がチェックしました。同学年の3選手は今季、いずれも開幕1軍スタート。安田は現在、新型コロナの陽性判定を受け登録抹消中ですが、それぞれのスイングを比較しながら解説しました。

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3選手にはさまざまな共通点がある。安田は大卒ルーキーだが、プロ入り5年目の村上、清宮とは同学年。そしていずれも右投げ左打ちの長距離砲。今回は、フォームの特徴が少しでも分かりやすくなるように、3選手を比較しながら説明していきたいと思う。

村上だけが左かかとを浮かせ、すでに始動している状態から始まっている((1))が、3人とも極端に軸足に体重を残して構えるタイプではない。これは右投げ左打ちによく見られる特徴。最初から軸足に体重を乗せて待ち構える状態からよりも、利き足でもある踏み込む側の右足から動かした方が、スムーズに始動できるからだろう。

【連続写真】楽天安田悠馬の打撃フォーム

若干の誤差はあるが、3人とも(4)の瞬間がトップの形。清宮は(3)→(4)でグリップの位置が下がっている。そのままの流れで(5)→(6)では背筋が丸くなり、窮屈そうな形でボールとの距離がとれない体勢になっている。

安田はその逆で、左肘の内側が捕手方向に向いてしまうほど、上がっている。これだけ上がってしまうと(5)に移行する際、頭の角度や顔の向きも変わってしまっている。(3)、(4)、(5)と1枚ずつ見るとそれほど悪くは見えないが、左肩が極端に落ち、右肩も内側に入り過ぎ、バットの角度も投手側に入り過ぎているのが分かるだろう。これだけブレが大きいと、立ち遅れの原因になりやすい。

その点、村上の(3)→(4)はブレがない。右腕を捕手方向に張ったままトップを作っている。個人的には(2)→(3)にかけて少しヒッチし、両腕を動かした方が柔軟性が出ると思うが、利き手が前の右投げ左打ちは器用に上半身を動かせないのだろう。それでも(5)→(8)にかけてバットが内側から体に巻き付くように出ている。

【連続写真】ヤクルト村上宗隆の打撃フォーム

ここで3人の(7)からインパクト後の(9)までの右足を比べてほしい。安田は(7)で右スパイクの内側がめくれ始め、清宮も(8)で内側がめくれ始めている。一方、村上だけはインパクト後の(9)まで右スパイクの内側がめくれていない。インパクト前に、踏み込んだ右足のスパイクの内側がめくれてしまうのは、力が外に逃げてしまっているから。右足の内側で回れていれば、スパイクの内側がめくれたり、つま先が浮くのはインパクト後になる。

清宮と安田が力をロスしてしまうのは、股関節をうまく使えていないからで、村上は柔らかく使えている。インパクト前後の写真を比べても、清宮と安田は左の骨盤が外回りして、村上だけが左の骨盤を内側にひねるように使えている。

村上のベルト左下にある四角いマークの位置をフィニッシュする(13)まで見てもらいたい。インパクトしてからもずっと見えているだろう。下半身の回転を上半身の回転が追い抜いている証拠。下半身の力を上半身に伝えられているから「下半身を使って打てている」となる。

清宮は(7)の時点で左の太もも付け根にたまった力がほどけている。だから(10)では腰が入っていない。(11)を見ても、小手先だけのスイングになっている。

【連続写真】日本ハム清宮幸太郎の打撃フォーム

安田は(8)(9)で腰は入っているが、上半身が後ろにスウェーしすぎで(10)と(11)では上半身がそっくり返りすぎている。上半身がスウェーすればボールとの距離がとれるし、その反動でそっくり返るのも、ある程度は仕方ない。しかし、これだけ無駄な動きが激しいと、スイング軌道がアッパーになりすぎる。インパクトゾーンが短く、あおり打ちになってドライブした打球が多くなるだろう。

この連続写真の結果は、清宮は外角やや低めのスライダーをセンター前ヒット。安田は外寄り高めのストレートを中越え本塁打。村上は外角ストレートを左中間へ本塁打。打った球がそれぞれ違うため同じようなスイングにはならないが、それぞれのスイングの特性は出ている。

プロで残している成績が示すように、村上のスイングは、清宮と安田のスイングをはるかに上回っている。ただ、3人ともまだ22歳。村上には、このまま打撃を極めていってほしい。安田は今のようなフルスイングを続けていきながら、無駄な動きを省いたフォームを身につけてもらいたい。

心配なのは清宮で、年々スイングに迫力がなくなっている。今年は減量してスリムになったが、持ち味は飛距離。ぜい肉は落としても筋肉量は落としてはいけない。プロで生き残るための方向性を間違わないでほしい。