「北東北の王者」は譲らない。新型コロナの影響で開幕延期の北東北大学野球が23日、秋田・さきがけ八橋球場で開幕する。4季ぶり37度目の優勝を狙う青森大は盛岡大(岩手)と対戦。主将の岩本雄勢内野手(4年=天理)は左足のケガで野球ができない時期もあったが、昨秋は最多打点とベストナインを獲得。全日本大学野球選手権(6月6日開幕)出場を決めるため、強い思いで最後の春に挑む。

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開幕が延期しても、青森大ナインの心は1つ。20日は紅白戦を実施。主力組は犠打や積極的な走塁で得点圏に走者を進めると、適時打で得点。調整は順調だ。岩本は「1週間延びたが、それが逆にいい方向にいっている。いい形で今週末に入れるかなと思います」。新チームから主将に就任し、打線では上位の一角を担う。「攻撃でも守備でも全部自分が引っ張るという思いはあります」と気合十分だ。

天理(奈良)から青森大に進学後、1年春からベンチ入り。幸先の良いスタートを切ったが、もどかしい時間が待っていた。同年夏に左足を骨折すると、最初は「1カ月ぐらいで復帰できると言われた」。しかし、1カ月を過ぎても痛みは取れず。年明けに病院へ行くと、骨折は治っておらず手術に至った。

グラウンドに戻る-。野球は1年間できなかったが、決して心は折れなかった。3年春にリーグ戦に復帰し、同年秋は「春に結果を残せなかった分、チームに貢献したいという思いが強かった」と最多打点、ベストナインを獲得。チームの優勝決定プレーオフ進出に貢献した。三浦忠吉監督(40)は「(ケガで)腐らずに体作りをしっかりやってくれて体重は10キロ以上増えました。打撃の力強さは劇的に変わり、4番を任せてもいいくらい長打力や勝負強さもある」と評価した。

優勝は渡さない。春の王者が出場する全日本大学野球選手権は、08年を最後に遠ざかっている。岩本は「タイトルはあまり興味がなく、優勝して全国に行きたい」と力を込めた。そして昨秋、優勝した富士大(岩手)に青森大が持つ1部最多優勝回数「36」に並ばれた。

三浦監督 今まで築いてきた方々の優勝回数を含め、絶対に(優勝回数を)超させないという責任は感じています。選手にその話はしていないですけど。自分自身、優勝回数は簡単に譲ってはいけないという思いはあります。

創部は1970年(昭45)。王者のプライドが、許さない。【相沢孔志】