阪神青柳晃洋投手(28)が日本トップクラスの投手戦を演じた。中日大野雄が完全投球を続ける中、自身も9回まで無失点。打線の反発を粘り強く待ち、最後は0-0の延長10回1死満塁でサヨナラ打を許した。それでも初の3試合連続完投。規定投球回数に達し、防御率0.76でいきなりリーグ1位に躍り出た。エースの実力を示した初黒星。試合後は「すみません」と頭を下げたというが、胸を張ってくれ!

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青柳は敗戦のベンチに戻ると「すみません」と矢野監督に謝った。大野雄が9回まで完全投球を続け、こちらも無失点。1歩も引かなかったが、延長10回に石川昂にサヨナラ打を浴びて力尽きた。目いっぱい差し出したグラブが打球に届かず中前へ抜けると、がっくり肩を落とした。「謝ることはなにもない。負けさせたベンチ、打線の責任」。矢野監督は見殺しにした申し訳なさであふれていた。

9回までに1点でも失っていれば球団62年ぶりの完全試合を食らっていた。互いに打線の援護がない投手戦。ひりつくような緊張感の中、青柳はそれを力にした。「大野さんが素晴らしい投球をしていたので、乗せられた。絶対負けないように。1点も取られなければ負けはない」。ゼロ行進で大野雄に応戦した。

阪神27人目の打者は青柳だった。代打は出ない。エースとエースの投げ合いは続行だ。9回2死。竜党の大歓声の中、二ゴロに倒れた。その裏、サヨナラを許せば快挙を許すプレッシャーの中、1番からを3者凡退。延長戦へ持ち込んだ。10回に佐藤輝の「阻止二塁打」を呼び込んだのは、間違いなくこの右腕だった。

最多勝、最高勝率に輝いた昨季から変わらない安定感。得意のツーシーム、スライダーを低めに集め、シンカーや高め直球で緩急と高低も使い、的を絞らせなかった。3戦連続完投が状態の良さをうかがわせる。ただ、エースらしく今季初黒星を認め、受け止めた。「大野さんに投げ勝つのが今日の目標。結果負けたので何とも言えないですね。また0点に抑えるように頑張るしかない」。このままで終われない。胸の底でリベンジの炎をともした。

負けて強さを示したのが防御率で、今季初めて規定投球回数に届いてリーグトップの0.76とした。開幕直前の新型コロナ感染で出遅れたが、投げるたびに存在感を高める。チームは今季9度目の零敗で、再び借金12。青柳の魂の109球をこの先、ムダにしてはいけない。【石橋隆雄】

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