「このまま終わってしまうんじゃないかなと思った時期もありました。腐らず、諦めずにやってきてよかった」

史上92人目となる2000投球回を達成した西武内海哲也投手兼任コーチ(40)は試合後、正直な胸中を明かした。葛藤もあった分、安堵(あんど)と達成感も大きかった。

「何年も前から言われていて、なかなか達成できなかった。何が何でも達成したいと実は思っていました」。投げたのは20年が19イニング、21年が7イニング。大台に届きそうで届かない。そんな時を長く過ごした。上での出番がいつ来るのかも分からない。周りは若手ばかりの2軍。通算135勝の左腕も、このまま終わるのではないか-。そんな不安を拭えなかった。

その中で自分を突き動かしてきた思いは? 答えはシンプルだった。

「やっぱり野球が好きだなということ。この舞台は、いっぱい緊張もありますけど、経験すると、やみつきになるというか…。この舞台に帰ってきたいという気持ちになる。そこだけですね」

4月29日に不惑、40歳を迎えた。最速140キロのストレートを低めに集め続けた。ベース幅も変化球の緩急も最大限に駆使し、打者の芯を外した。節目まであと1人。5回2死から巨人時代の同僚である宇佐見にソロを許した。その“恩返し弾”をくらって、その内心は「宇佐見の野郎」と笑うが、失点はこれだけ。円熟の63球だった。40歳白星は今後にお預けとなったとはいえ、「緊張したけど、よくやったなと思います」とうなずいた。

冷静に現在地を見つめる。

「ローテーションに入るというよりは、谷間で『頼むぞ内海』とマウンドに上がると思う。毎週毎週投げられるわけではない。一発回答が求められる。今日だめだったら、もうないんじゃないかという崖っぷちできた。それはこれからも続くと思う」

美しいワインドアップの投げる姿は変わらない。ただ、役割は昔のようなエースではない。困った時に頼りになる。そんな仕事を遂行していく。「次に向かうステップとしていい状態で投げられた。1軍で投げることを糧にこれからまた頑張りたい」。新たに得られた手応えも、変わらぬ危機感も胸に刻みながら、次なる舞台の準備を進めていく。【上田悠太】