上武大が4季連続37回目の優勝を決めた。

ドラフト候補に挙がる最速153キロ右腕・加藤泰靖投手(4年=志学館)が、勝てば優勝が決まる大一番で「主将の意地」を見せた。力強いまっすぐを軸に、多彩な変化球で緩急をつけた。5回2/3を投げ4安打。武器になったのは、フォークボール。「今まで縦の変化がなかった。今日は決め球として使えるようになったのが一番の変化です」。三塁を踏ませぬ投球で、無失点に抑え、流れを引き寄せた。

好投の加藤に、打線も応えた。4回まで、白鴎大のドラフト候補、曽谷龍平投手(4年=明桜)を打ちあぐね、1安打無失点に抑えられていたが、5回には2四死球と中安打で無死満塁とすると、押し出し死球で先制。さらに2死満塁から1番・藤原龍之介外野手(4年=秋田南)が右越え適時二塁打を放ち2点を挙げ、曽谷を攻略。8回には5点を挙げ試合を決めた。

もがき苦しんだ春季リーグ戦だった。加藤はエースとしてリーグ戦に臨むも、調子が上がらず、6試合に登板し3勝。前週5月8日、平成国際大戦で先発するも2回を投げ3安打2失点で降板した。「エースとしてチームを勝たせたい、という思いで球を置きにいってしまった。自分中心に考えるとこういう投球になってしまう」。悔しさで下を向く自分に、チームメートは「大丈夫だよ」と声をかけてくれた。「自分はエースである以前に、主将なんだ」。チームメートと積極的にコミュニケーションをとり、周りに目を配った。「自分もリラックスできて気持ちが楽になりました」。

最高の状態で、この日を迎えた。先週までの自分はもういない。コーナーに丁寧に投げ分け、1球1球力を込めた。「今日は気持ちが自分の中で1番よかったと思います」。主将として、マウンドに立つ。加藤の精神的な成長が、チームを優勝に導いた。「今日は1勝を全員で勝ち取ることができました」。加藤は春季リーグ戦を、最高の笑顔で締めくくった。【保坂淑子】