阪神大学リーグ1部2部入れ替え戦の第2戦が16日に南港中央で行われ、大阪電通大(2部)が甲南大(1部)を2-0下し、創部初の1部昇格に逆王手をかけた。先発の江本裕輝投手(3年=枚方津田)が3安打で完封。18年3月から昨年11月まで投手コーチを務めた元阪神の江草仁貴2軍投手コーチ(41)に恩返しするべく、17日に運命の第3戦に挑む。

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身長169センチの江本が、大きくほえた。9回表2死。この日154球目で最後の打者を中飛に仕留め、ゲームセット。ベンチ前で迎えてくれた仲間のもとに飛び込み、「うおお!」と声にならない声で喜びを表現した。「江草コーチがいた時もずっと、『お前がエースとして引っ張っていけ』と言われていた。今日負けたら終わり。捨て身の覚悟で挑めました」。やっと、期待に応えられた。

大阪電通大は1部リーグのみだった63年に加盟。70年に2部リーグができて以降、昇格できていない。“弱小野球部”を強化すべく、18年3月、同年2月に「学生野球資格回復」の適正認定者となった江草コーチを招へいした。昨年11月までの3年8カ月の指導で「あいつら、ホント変わりましたよ。よく練習するようになった」とうなるほど、技術も意識も改革された。

同じ左腕の江本は愛弟子代表格だ。当初は他大学に進学予定だったが、「江草コーチがいたから」と進路変更。入学して間もなくカットボールを教わった。「カットは一番の武器。江草コーチのおかげで操れるようになった」。この日もバットの芯を外し、甲南大打線を散発3安打。中盤に奪った2点を守った。

時には練習メニューについてぶつかったこともあったが、リーグ戦前には焼き肉屋で決起集会も開いてくれた兄貴分的存在だった。「本当にかわいがっていただいた。江草コーチもずっと1部を目指してやってきた。喜んでもらえるように、いい報告ができるようにしたい」と江本。就任1年目の清田和正監督(52)も「試合中もフィールディングがうまくいったら『江草コーチに感謝!』とベンチから聞こえる。投手が伸びたのは江草コーチのおかげ」と感謝する。恩返しはまだ終わっていない。17日午前10時、南港中央で行われる第3戦。歴史を変え、江草コーチに朗報を届ける。【中野椋】

◆大阪電通大硬式野球部 1962年(昭37)創部。阪神大学野球連盟2部東リーグ所属。15年春には1985年春以来、30年ぶりの2部リーグ優勝を果たすも、入れ替え戦出場決定戦で流通科学大に敗れ1部昇格ならず。今春は8勝1敗1分けで13季ぶり3回目のリーグ戦制覇。その後、追手門大との入れ替え戦出場決定戦を2勝1敗で突破した。17年に大学の強化指定クラブに認定。清田和正監督。

◆江草仁貴(えぐさ・ひろたか)1980年(昭55)9月3日生まれ。広島県出身。盈進、専大を経て、02年ドラフト自由枠で阪神入団。主に中継ぎを務め、05年には桟原、橋本との救援トリオ「SHE」で優勝に貢献。シーズン50試合以上登板を4度こなした。11年5月にトレードで西武移籍。12年3月に再びトレードで広島移籍。17年限りで現役引退。通算成績は349試合で22勝17敗48ホールド、防御率3・15。18年3月から昨年11月まで大阪電通大で投手コーチを務め、今季から阪神2軍投手コーチに就任。妻はバレーボール女子元日本代表の竹下佳江さん。現役時代は178センチ、83キロ。左投げ左打ち。