将棋のまちの山形で、アダム・ウォーカー外野手(30)が「と金」に覚醒した。同点の4回、左前打で本塁を狙った二塁走者を本塁でノーバウンド返球で補殺を決めてチームを救った。

米独立リーグから推定年俸3300万円で海を渡ってきた“原石”。3安打猛打賞でリーグ3位の打率3割1分3厘の打力に加え、課題だった守備面でも「歩」の様に練習を積み重ねてきた成果を発揮。今季初も含めて1試合2補殺を決めた。26日の自力V消滅ショックを一掃する活躍で中日との対局を制した。

   ◇   ◇   ◇

野球と将棋に「諦め」の2文字はない。首位ヤクルト3連戦で負け越した巨人にとって、自力V消滅後初の試合は将棋の街、山形だった。

「歩」のように地道に練習してきた男が成果を見せる。守備、特に返球を苦手としてきたウォーカーが見事なバックホームを見せ、チームのピンチを救った。

1-1の同点で迎えた4回2死一、二塁、中日石橋が左前打を放つ。ここまでウォーカーの前に安打が飛ぶと決まって相手三塁コーチが腕をぐるぐると回し、本塁突入を指示。この場面でも同様だった。

しかし、この日のウォーカーは違った。ノーバウンドで捕手・大城にバックホームし、二塁走者の阿部を刺す。中日立浪監督がリクエストを要求するも、ジャッジ通りアウト判定。中日の勢いを止める大きな一手を指した。

シーズン当初、内野への返球が自分の足元にワンバウンドするほどだったが、毎日のように亀井善行外野守備兼走塁コーチと守備練習に取り組んだ。試合前練習での外野からの返球はもちろん、ジャイアンツ球場ではブルペンに入り、捕手目がけて投球練習。スローイングの基本から学び直した。

2回1死一塁でも中日高橋の左前打の間に、一塁走者A・マルティネスが当たり前のように本塁突入。ここでも遊撃・坂本へ好中継し、初補殺を演出した。

目を細めた恩人の亀井コーチへ「指導してくれたことが今日やっとプレーできた。亀井さんを喜ばせることができてうれしい」と笑った。

将棋駒で有名な天童市のチーム宿舎で前夜、吉川と対局。ルールを教えてもらいながら、チェスの経験を思い出して「本当に楽しい時間をチームメートと過ごすことが出来た」。日本の習慣や文化に積極的に触れようとする勤勉さも、日本野球への順応とは無関係ではない。

原監督も認める努力の男。その日々がウォーカー(Walker)をその名の「歩」から「と金」へと成り上がらせた。【三須一紀】

▽巨人原監督(ウォーカーの好返球に)「今日は初めて補殺というかね、いいものを見せてもらったなという感じがしますね」

▽巨人亀井外野守備兼走塁コーチ(ウォーカーの本塁補殺の返球を見て)「涙出そうになっちゃったよ。彼の最初を見た人は分かると思う。これが成長。最初から見てる僕からしたら感動もんやった。努力のたまものです」

【関連記事】巨人ニュース一覧