阪神近本光司外野手(27)が6日広島戦(甲子園)でプロ野球史上8人目となる30試合連続安打を達成し、11年マートンの球団記録に並んだ。球界では76年張本勲(巨人)、77年福本豊(阪急)に並ぶ歴代5位。レジェンド左打者に肩を並べた。連続試合安打のプロ野球記録は79年高橋慶彦(広島)の33で、あと3。阪神は4回に出た近本のチーム初安打から逆転し、待望の広島戦今季初勝利。7日も勝てば6月20日以来の3位に浮上する。

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近本は左手ひとさし指で一塁ベンチに合図した。盛り上がるナイン、甲子園の大きな拍手と反比例して、一塁ベース上で極めてクールだった。

「あんまり僕、記録にこだわりないんで、正直どうでもいいんですけど…。ただ、毎試合ヒットを打ちたい。それの積み重ねた結果だと思います」

4回2死。広島床田の147キロを中前に運んだ。5月28日ロッテ戦から30試合連続安打。11年マートンの球団記録に並んでも表情は崩れない。高橋慶彦の日本記録まで、あと3。「気になるし、気にさせられるし、ねえ。気になったところで自分のやることは一緒」。カウントダウンに入り、冷静さが一層際立つ。

投手として関学大に入学。肩肘の故障に泣き、野手転向を決意したのは2年秋のこと。そこから野球部で1学年下の植松弘樹さん(27)と二人三脚のトレーニングが始まった。

「このトレーニングはどう?」「何かいいエネルギー源はない?」。今も個人トレーナーを務め、アウトプットを交わす。「師匠」と表現したこともある後輩を相手に、人知れず聞き役に徹し、熱く語った夜がある。

昨年12月。淡路島での自主トレ後、明石海峡大橋が見える露天風呂で汗を流した。関学大職員からトレーナー業への転職を決めていた植松さんの不安が次々と口を突く。先輩はその全てを優しく受け止めた。

「いつも、ちゃんとダメなことはダメって言ってくれる。それがあるから今でもこうやって一緒にいる。だから、自分らしくやればいいんやで」

後輩の背中を押す言葉は、自身を表しているようでもあった。俊足左打者でも「当て逃げ」しない。淡路市・東浦中時代からの一本足打法は今でも不変。「自分らしさ」を極め、プロ野球の世界で個性を築いた。瀬戸内の夜景を前に語らった冬の1日が、22年シーズンの原点だ。

4回は背番号5の一打を起点に3得点を奪い、一気逆転で3連勝。今季広島戦12戦目で初勝利を挙げた。球団史上3人目となる入団以来4年連続100安打も達成。3年連続球宴選出とメモリアルデーになった。

「いろんな連絡があって僕も元気はもらっている。そういう人たちのためにもうちょっと頑張ろうかな」

心は熱く、頭は冷静に。次の1打席に向かう。【中野椋】

▼近本が連続試合安打を30とし、11年マートンと並んで球団最長となった。プロ野球全体では5位タイ。社会人野球出身選手としては、77年福本(松下電器→阪急)と並びトップだ。

▼これで近本は、プロ1年目からの連続100安打以上を4年に伸ばした。球団では、吉田義男8年(53~60年)後藤次男5年(48~52年)に次ぐ3位だ。

〇…阪神近本が30試合連続安打を記録し、球団最長記録に並ばれた元阪神のマット・マートン氏(40)が自身のツイッターで祝福した。日本語で「近本選手、30試合連続安打おめでとうございます! 日本記録目指して頑張ってください。アメリカから応援してます!」とツイートし、日本、米国の国旗の絵文字を並べた。残り3試合と迫った79年広島高橋慶彦の33試合を狙ってほしいと期待した。

○…山本が勝ち越し打を放ち、広島戦今季初勝利に貢献した。2-2の4回2死一、二塁で、打席に入ると「速くて入ってくる球っていうのを意識して一発で捉えられるように意識してやりました」。広島床田のツーシームを狙い通りに捉え、中前に運んだ。「勝つということが一番。広島に対して勝てたことはすごくチームとして自信につながる」と喜んだ。

▼阪神は今季の広島戦で、12回戦にしてようやく初勝利を挙げた。今季このカードは、初戦から11戦勝ちなし(9敗2分け)。従来の開幕からの同一カード未勝利最長だった、88年の同じ広島戦10戦10敗を更新していた。

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