巨人中田翔内野手(33)が「第91代4番」初打席で決勝打を決めた。19年9月27日DeNA戦(東京ドーム)以来の4番以外でのスタメンとなった岡本和に代わり、昨季途中の移籍後では初の4番で先発出場。初回に先制の中前適時打を放って勢いづけ、守備でも6回1死満塁のピンチで好プレー。攻守で存在感を発揮し、5月以来となる2カード連続の勝ち越しに貢献した。

   ◇   ◇   ◇

「4番中田」のコールに敵地のファンも沸いた。昨季途中まで所属した日本ハムでは慣れ親しんだ打順でも、巨人のそれはまるで歴代首相のように数えられ注目される。

第91代はゆっくりと打席に向かった。バッターボックスの土をならした右足を、地面に突き刺すようにセットする普段通りのルーティンで中日先発松葉と向き合う。「いつも通りのことをやるだけ」とバットを構えた。

1回2死三塁。追い込まれながら厳しい内角攻めをファウルで粘って9球目。外角チェンジアップを捉え、先制の中前適時打を放った。重圧を1つはねのけたというのに、一塁上では表情すら緩めなかった。

守備でも先発山崎伊を助けた。6回1死満塁で打席にはレビーラ。飛球が一塁側内野席に向かっていった。諦めずに追う中田は、客席とグラウンドを隔てるネットに飛び込んだ。「ネットが目に入ったけど、捕れると思ってジャンプした」。一邪飛とし、この日最大のピンチを救った。

9回2死から決勝13号ソロを放った前夜の試合後、原監督から告げられた「巨人の4番」。気負いはなかった。「4番はチームの勝敗を分けるところ。(日本ハムでも)うまくいかなければ外されることもあった。自分を信じてやるしかない。これまでもそうしてきた」と、豊富な経験が自らを助けた。

最近10試合で打率4割2分1厘、38打数16安打3本塁打という好調を買われての打順。チームとしては不動の4番だった岡本和の奮起を促す狙いもある。

打線に好循環が生まれ、2カード連続の勝ち越しを決めた。立役者となった中田だが「4番は和真の席。戻ってくるまでみんなでカバーしながらやっていくだけ」。第91代は平常心のままだった。【三須一紀】

▽巨人原監督(中田について)「非常に存在感がありますね。(岡本和と)両方にとっていい刺激になれば、それが一番いいと思います」

▽巨人吉川(2試合ぶりにスタメン復帰し、6回2死二塁で右翼線へ適時二塁打)「インサイドのボールをしっかりと捉えることができました。(山崎)伊織のためにも追加点が取れて良かったです」

○…打線の組み替えが奏功し2連勝を飾った。4番中田が先制打、2戦ぶり先発の吉川と大城も打点を挙げた。原監督は「流れとしてはよかったですね」と納得の表情。不振でも我慢して起用してきた4番から1049日ぶりに外した岡本和真には「叱咤(しった)激励するほど余裕はないんだけど(笑い)。本人が(復調への)ステップにしてくれないとね。それをいい材料として捉えてくれることを願うばかりですね」と4番奪還を期待した。

【関連記事】巨人ニュース一覧