ポストシーズンも頼んだ! 8日開幕のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージDeNA戦(横浜)でフル回転が期待される阪神湯浅京己投手(23)に、独立リーグBC富山時代の先輩、乾真大氏(33=現BC神奈川コーチ)から熱いエールが届いた。元巨人の左腕は、当時毎日のようにキャッチボール相手となった師匠だ。聖光学院高(福島)から加入1年でプロ入りした右腕の覚醒秘話を明かし、短期決戦に強いハートの持ち主だと太鼓判を押した。

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乾氏は疑いなく言った。「(湯浅は)ポストシーズンでさらに活躍できるピッチャーだと思います」。思い出すのは富山でともに戦った18年。後期リーグ優勝を果たし、前期優勝の福井とのチャンピオンシップだ。9月17日、2戦目の先発を任され7回まで2失点。8回に崩れ降板しチームも敗れたが、自己最速151キロをマークするなど大一番で強心臓の片りんを見せつけた。

「あの子はアドレナリンを力に変えられる。決してひるまない。独立リーグでも一番よかったのはプレーオフでした。大事な試合でこそ力を発揮できる」。日本ハム、巨人の計7年間でNPB通算74試合登板。日本ハムで同僚だった大谷(エンゼルス)ら一流と接してきたからこそ分かる。初のCSでも湯浅なら大丈夫。その肝っ玉、投げっぷりを知っているから大舞台での躍動を確信する。

乾氏がグラブをはめる右手には今も衝撃が残る。巨人を戦力外となった17年オフ、湯浅と同時期に富山に加入。キャッチボール相手がおらずたまたまペアを組んだ。「当時はコントロールがめちゃくちゃ。胸にバシーンと来たと思ったら、その次はネットにガシャーン(笑い)」。その中でも「10球に1球は『これ、俺でも勝てないな』ってボールがありました」。ホップする強い直球に可能性を感じた。

フィールディング、けん制は「僕の100倍うまかった」とセンス抜群だった。「どんな体勢でも投げられる。だから指先の感覚はしっかりある子だったと思う。ただ、ホームに投げるコントロールだけ悪かったので」。伝えたのは「1球1球大切に投げなさい」。力任せに投げるスタイルに別れを告げると「10球に1球」の確率も自然と高まっていった。湯浅が「乾さんとのキャッチボールで教わったことは今でも大切にしている」と語る原点の日々。高卒で独立リーグに加入し1年で阪神にドラフト指名された急成長に“師匠”は欠かせなかった。

何より、プロ向きの勝負根性に驚かされた。「ダッシュとかでも、30歳の僕に挑んできて勝つまで終わりませんでしたから。ただのいい子じゃ勝負に勝てない。負けず嫌いは今の活躍につながっていると思います」。この日、湯浅は甲子園でダッシュやキャッチボールなどで調整。8日開幕の決戦へ向け準備OKだ。「1年の総決算。何も変わらず投げてくれたら」。乾氏も右腕のフル回転を願っている。【中野椋】

◆乾真大(いぬい・まさひろ)1988年(昭63)12月8日、兵庫・加古川市生まれ。東洋大姫路で3年夏に甲子園8強。東洋大から10年ドラフト3位で日本ハム入団。16年4月にトレードで巨人へ移籍。NPBでは中継ぎとして通算74試合に登板して1勝2敗、防御率5・65。17年12月に独立リーグのBC富山に入団。19年10月に同リーグの神奈川へ移籍。投手兼任コーチとしてプレーし今年8月30日の茨城戦で現役最終登板。今季限りで現役引退し現在は神奈川でコーチを務める。175センチ、83キロ。左投げ左打ち。

○…乾氏の現役最終登板となった8月30日のBC茨城戦には関係者から多くの花束が届いた。その中に湯浅の名前もあった。「メッセージもくれました。『たくさん投げて恩返ししていくので見に来てください』と。素直でいい子なところは何も変わってないですね」。59試合登板で45ホールドポイント。最優秀中継ぎのタイトルも獲得し飛躍した愛弟子とは9月中旬、DeNA戦(横浜)に観戦に訪れた際に再会した。今季の活躍を「想像以上」とし「タイトルに侍に、本当にすごいと思います」と目を細めた。

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