<日本シリーズ:オリックス1-0ヤクルト>◇第4戦◇26日◇京セラドーム大阪

オリックス初勝利の原動力は言うまでもなくブルペン陣の働きだ。3安打1得点での勝利。出る投手が、みな力のある投球をするのは見ていて楽しい。本塁打が期待できず、得点力が不足しがちなチームでやはり投手力は逆襲へのカギだ。

同時にうなる要素もある。いわゆる“生え抜き”のオンパレードなのだ。先発の山岡泰輔は16年のドラフト1位。3番手・山崎颯一郎も同年の「ドラ6」だ。2番手で光った宇田川優希は20年の育成ドラフト3位。それがここまで投げているのだから立派なものだ。

イチロー、田口壮の存在を中心に日本一に輝いた96年のオリックス・ブルーウェーブは移籍組も多かった。同年10月24日、グリーンスタジアム神戸(当時)での第5戦で巨人を下し、日本一を決めた9回表。守備陣は外野を除けば全員、移籍組だった。古い記録で名前と元の所属球団を書けばこんな感じになる。

投手・鈴木平(ヤクルト)

捕手・高田誠(巨人)

一塁・四條稔(巨人)

二塁・大島公一(近鉄)

三塁・馬場敏史(ダイエー)

遊撃・勝呂寿統(巨人)

95年まで近鉄に所属し、トレード移籍してきた1年目に活躍、日本シリーズでも光った大島は当時こんな話をしている。「近鉄ではチャンスになればなるほど制約が増えた。オリックスでは逆。チャンスのときほど自由にやらせてくれた。やりやすかったし、自分に責任ができた」。

これも当時の指揮官・仰木彬の「マジック」だった。放任主義で自覚をもたらす。言ってしまえば簡単なことだが、そのスタイルを目指し、うまくいかないケースは少なくない。

その意味で現在のオリックスも独特だろう。阪急・オリックスを振り出しに西武、横浜(当時)、日本ハム、さらにメジャー留学という中嶋聡の経験が生きているのかもしれない。選手にやる気を持たせるスタイルで結果を出しているようにも見える。

もちろんFA選手を獲得できない、いいトレードが組めないなどの要素も背景にはあるようだ。それでも生え抜き選手を中心にチームを結成し、勝てれば理想に近い形だろう。かつては「ビッグボーイズ打線」などと外国人の移籍組による主軸を組んだチームとは違う姿がここにある。26年ぶりの日本一へ。まず次の1勝が重要だ。(敬称略)