夢の大出世だ! 最多勝、最高勝率、最優秀防御率の3冠を獲得した阪神青柳晃洋投手(28)が8日、西宮市内の球団事務所で契約更改交渉を行い、倍増の2億4000万円でサインした。入団時の年俸720万円から約33倍の大昇給を遂げ、球団生え抜き投手では藤川球児(4億円)に次ぐ2番目、チームのドラフト5位以下では史上最高額を勝ち取った。阪神はポスティングシステムでメジャー挑戦を目指す藤浪を除く全選手が契約を更改した。

   ◇   ◇   ◇   

紺色のスーツをビシッと着こなした青柳が、会見場で勇ましく胸を張った。「いろいろ活躍できたので、最大限の評価をしていただいたかなと思います」。倍増の2億4000万円で更改。年俸は入団時の720万円から約33倍まで上昇し、阪神のドラフト5位指名以下の選手では、過去最高額の年俸を勝ち取った。

「ドラフト下位で入って、僕自身もこうなると思っていなかった。僕の昔を知ってる人だったら、ここまでになるとは思ってない。活躍したらこんだけ上がるっていう、年俸が低いドラフト下位で入る子の希望になるかなと思うし、お手本になれたらと思います」

野球少年や多くのプロ野球選手に夢と希望をもたらした。地元横浜・生麦中の軟式野球部3年時は3番手投手だった。そこから無名校の川崎工科でエースとなり、帝京大からドラフト5位で阪神へ。プロ入り後も3年間は苦戦が続いたが、努力と試行錯誤で、4年目に先発ローテに定着。今季は2年連続で最多勝(13勝)と最高勝率(7割6分5厘)、さらに最優秀防御率(2・05)で3冠を獲得するなど、球界を代表する右腕にのし上がった。

漫画好きの右腕は、バスケットボールを題材としたアニメでも絶大な人気を誇る「スラムダンク」からも影響を受けていた。主人公の桜木花道が高校で競技に出会い、仲間とともに才能を開花させていく物語。自身の境遇と重ね合わせて言った。「それこそ素人から入っていった選手が、あそこまでのめり込んで頑張ればできるのを体現してくれていますし、そこから得ることはいっぱいある。モチベーションを上げる動機として、(漫画を)買わせてもらってます」。公開中の映画については「行きたい」と目を輝かせた。

向上心が尽きることはない。「2年活躍したからって来年活躍が約束されているわけでもない。また自分を変えていかないといけない」。目標の「15勝超え」へ、新球習得への着手していることを明かした。「配球、抑え方のバリエーションを増やしていけたら」。 新背番号17のユニホーム姿も初披露。来季も青柳無双全開で、チームを「アレ」へ導く。【古財稜明】

◆ドラフト下位指名から高額年俸を勝ち取った投手 10年育成ドラフト4位のソフトバンク千賀滉大は、今季年俸6億円で、1年目の270万円から、約222倍にはね上がった。オリックス増井浩俊は09年5位で日本ハム入団し、FA移籍したオリックスで18~20年は年俸3億円。古くは81年西武6位の工藤公康は、巨人時代の01年に自身最高の3億円を稼いだ。

▼阪神のドラフト5位以下の投手では、昨季までの最高額は22年岩崎優(13年6位)の1億5000万円。岩崎は来季2億円で、青柳はこれらを超えた。ほかに阪神の5位以下では、02年5巡目の久保田智之が09年に1億1000万円を得た例がある。

▼青柳の2億4000万円は、阪神生え抜き投手では藤川球児に次ぐ数字。藤川は09~12年に4億円、08年は2億8000万円を稼いだ。野手も含めると今回の青柳の年俸は、鳥谷敬が15~19年に各年4億円を得て以来の高額。移籍選手も含めたチーム最高年俸は07~09年の金本知憲の5億5000万円。

<青柳が来季達成可能な主な記録>

◆最多勝 3年連続ならセ・リーグ初。パでは近鉄の野茂英雄4年連続(90~93年)西武の松坂大輔3年連続(99~01年)がある。

◆最優秀勝率 3年連続なら1リーグ時代含めて史上初。オリックス山本由伸も今季2年連続で獲得しており、可能性がある。

◆防御率1位 2年連続なら、球団では2リーグ分立後初。1リーグ時代には、西村幸生が37年秋、38年春に達成している。