言葉は大事に扱っているつもりだが、息づかいを活字にするのは難しい。「すぅー」だろうか。ロッテ山口航輝外野手(22)に、将来欲しい背番号を尋ねたのは今年1月、ロッテ浦和球場でのことだ。

「特に何も考えてはないですけど。51番っていう番号はいいと思いますし」

そう言ってから「すぅー」と寒気を吸い込んで、落ち着いてから自分のタイミングで足した。

「ま、欲しい番号って言われたら、あの、まぁ、3年くらい20、30本頑張って、9番は欲しいなと。そんな簡単にもらえる番号じゃないと思うんで。そんな、誰もが付けられるような番号じゃないのは分かってるんで。9番を目指して」

9番。レジェンドと呼ばれた福浦和也ヘッド兼打撃コーチ(47)が現役時代に付けていた背番号だ。

そこへの思いを口にした山口は、21年に9本塁打を放ち、覚悟をさらに深めたプロ4年目を過ごした。1試合3発を含むシーズン16本塁打で終えた。「開幕スタメンで出られずに悔しい思いをして、どうなるかなというところからスタートしましたけど。何とか最後いい形で終われましたし、まぁまぁできたんじゃないかなと思います」。そんなふうに総括した。

悔しさをバネにする。負けず嫌い。「自分の中でもあると思います、けっこう。どっちかというとそういうタイプなんで。表には出さないですけど。中で隠すタイプだと思うので」。吉田輝星の金足農に敗れ、秋田での高校野球を終えた。「あいつを抜かせる未来に」と堂々口にした。

昨季、3年目の飛躍のかげにも悔しさがあった。チームがコロナ禍に見舞われた20年。シーズン終盤は選手総動員での戦いを余儀なくされたが、2軍で実績を出し始めていた山口が1軍に呼ばれることは最後までなかった。

「そこが今、頑張れてる理由というか。野手でほぼ自分だけ1軍に上がれなかったので。本当に悔しい思いでした。今までの野球人生でも一番といっていいくらい、悔しい思いをしたので」

なぜ自分は最後まで呼ばれなかったのか-。首脳陣に真意を確認する機会はなかったようだ。悔しさをバネに鍛え続け、プロ5年目を迎える。今季の最終戦に放った16号3ランは、パ・リーグの優勝チームを決定づける1発に。ある意味、パの歴史を変えた。

「喜んでいいのかも分からへんかったし。打った瞬間。複雑っていうか、あんまり、ああいうのはないと思うんで。不思議な感じの1発になりましたね」

今度はチームの4番打者として、パの主役を目指す。「4番を打たせてもらって、その後外れた時に、やっぱり4番っていい打順だなとあらためて思ったので。チームの顔になると思うので。4番が打たないと試合に負けることも。どれだけ重要な場所かというのは理解したので」。

自覚も芽生えた若きスラッガーを、芽吹かせた側はどう見ているのだろう。井口資仁前監督(48)は以前、20年終盤に山口だけを1軍に上げなかった理由を明かしていた。

「山口にはちょっと鮮烈なデビューをさせたいというのは、こっちもありましたし。あそこで上がってすぐ落とすというよりは、下でしっかりとやらせたいというところでしたかね」

主砲への道筋はしっかり描かれていた。2023年が始まる。豪快に応える時だ。【金子真仁】

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